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1 いま、社会の何が問題なのか?

ではさっそく、1章から書き始めます。

1 いま、社会の何が問題なのか?

現代は大転換時代である
 少子高齢化、国際競争力の低下、縦割り組織の弊害、政治の混乱、外交問題、震災などの災害対策の問題、格差拡大や福祉の問題など、日本国内には様々な問題があふれている。日本は閉塞感の時代を迎えていると言われる。では、なぜ、このような問題が生じたのだろうか。様々な要因が考えられるが、ミクロな要因はひとまず置いておいて、クロな文明史的視点に立ってみたい。まずは、地球規模の空間スケール、数千年単位の時間スケールで問題を俯瞰してみたい。
 私は、現代とは大転換時代であると考える。歴史を俯瞰的に捉えれば、現代とは、農耕革命、産業革命に匹敵する、情報革命という大転換の夜明けとみなすべき時代なのではないだろうか。
 情報革命ないしはIT革命という言葉は使い古された言葉とお感じの方もおられるかもしれない。実際、IT革命という単語は2000年の新語・流行語大賞を受賞しているから、もはや10年以上も前の言葉である。しかし、紀元前数千年に農耕革命が起きてから数千年、18世紀に産業革命が起きてから数百年かけて社会構造が大きく変化したのと同様、情報革命(IT革命)は現在も進行中とみなすべきではないだろうか。さらに言えば、情報革命に基づく社会変化はこれから本格化すると見るべきではないだろうか。
 では、情報革命とは何か。コンピュータができ、インターネットが進展し、パソコンやスマホが便利になり、ツイッターやフェースブックで大量の情報が行きかう時代。企業や省庁の情報管理がシステム化され、効率化される時代。市民生活に便利な情報がもたらされる時代。これが現時点だろうか。
 今後は、この流れがあらゆるモノと人に及ぶ。家電も自動車も医療情報も学校も、集中型のエネルギーも分散型のエネルギーも、あらゆるモノと情報とエネルギーがつながる時代。人々の脳と機械もつながり、思考も情動も生きがいもつながる時代。世界中の人のあらゆる情報が必要なら必要なだけつながり、大量の情報はそれなりに整理され、必要なだけ取り出せる時代。都市の在り方も、人の生き方も、国家や民族のあり方も、文化も文明も、現代とは違ってしまう時代。今から100年くらいかけて、世界の構造が抜本的に変わる時代が目の前に来ている。そう捉えるべきだろう。
 テレビを見て電話を使い車に乗っているという意味では、数十年前と今の生活はさほど変わらない。だから、数十年後もそんなに変わらないのではないか。そうお思いの方もおられるだろう。しかし、農耕革命の前後、産業革命の前後を考えてみていただきたい。時代は大きく変わった。農耕革命前は狩猟・採集の時代だ。人々は獲物と果実を求めてさ迷い歩いた。一方、農耕・牧畜が開発された後には、人々は定住し、人が増え、富が蓄積され、村ができ、町ができ、都市ができ、貨幣経済ができた。産業革命の後には、人々は大企業を作り、都市化を加速し、国家規模を拡大し、貨幣経済を複雑化させ、大人数の知によりさらに科学技術進歩を加速させ、高度な製品群を作った。もちろん、コンピュータとインターネットも。
 それでも、人々は、食事をし、団欒をし、仕事をし、恋愛をし、人を育てるという意味では、昔と変わっていないともいえるかもしれない。情報革命後も、そういう意味での基本は変わらないだろう。しかし、つながり方の質と量が圧倒的に変わる。

ネットワークの時代とは何か
 未来図は置いておくとして、では、大きな時代の流れの中で、今、何が起きているのだろうか。
 インターネットに端を発するネットワークの時代、ロングテールの時代、スモールワールドの時代、草の根がつながるボトムアップの時代、社会貢献・社会企業・利他の時代、といった現代的キーワードがヒントになる。
 ネットワークの時代とは、読んで字のごとく、情報通信ネットワークが整備されるという意味と、それを介した人々のネットワーク、ないしは、情報のネットワークが高度化するという意味を表す。
 ロングテールとは、たとえば本屋には置いておけないようなニッチな本も、インターネットではわずかながら売れることを表す。リアルの本屋では切り捨てられていた大量の個性のある製品群が、インターネット社会ではわずかとはいえ生き残れることを表している。わずかと書いたが、確かに、一製品を見ると微々たる売上かも知れない。しかし、様々の分野の、様々な製品が、世界中の様々なニーズに合致して売れていくのである。すべてを足すと極めて大きな市場になる。規格型大量生産時代とは異なる、大規模少量生産の極限のような大市場が出現したのである。
 スモールワールドとは、ネットワーク社会では、知り合いの知り合いの知り合いの・・・と6人もたどれば、世界中の人とつながるというミルグラムの研究に端を発した考え方だ。世界は思いのほか小さい。人々は思いのほかつながっている。
 草の根がつながるボトムアップ時代のいい例は、各国の市民運動にツイッターやフェースブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が貢献していることだ。チュニジアからエジプトに飛び火した民衆による体制転覆運動で、ツイッターとフェースブックが市民の情報伝達に重要な役割を果たしたことは記憶に新しい。
 社会貢献・社会企業・利他の隆盛も、つながりにドライブされる。ソーシャルキャピタル(人間関係資本)という概念がある。社会でのネットワークや信頼関係、価値観の尺度であり、地域組織や団体での活動の頻度、投票率、ボランティア活動、友人や知人とのつながり、社会への信頼度などを指標として測ることができる。企業にも、営利だけを目的にするのではなく、社会問題の解決を第一目的にしたソーシャルビジネス(社会的企業)が出現している。BOT(ベースオブザピラミッドまたはボトムオブザピラミッド、貧富の階級の最貧困層という意味)という概念も、ネットワーク化された社会を介して貧困層にビジネスがリーチできる時代が来たことを表している。現代とは、個人も企業も利他的な行動をとりたいと思う者が増えていると実感される時代である。推測だが、利他的な人の数が増えたというよりも、情報革命により多様なネットワークが整備され始めたことにより、利他的な行動をとりやすくなったということだろうと思われる。草の根の政治行動をとりやすくなったのと同根である。
 上記の現代的キーワードは呼応し合う。多様な者が多様につながることのできる、いや、つながらざるを得ないがゆえに起き始めているパラダイムシフトである。すなわち、あらゆるものごとが大規模・複雑化し、互いに影響しあうために、要素だけを取り出して問題解決することはもはやできない時代である。あらゆるイシューが、複雑にもつれ合った大量の糸のように巨大なネットワーク構造になって関係し合うグローバル時代である。

つづく
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