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紫竹おばあちゃん、ありがとう

紫竹おばあちゃん、ありがとう。

2013年に出した『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』 (講談社現代新書) の228ページから230ページまで、北海道の紫竹ガーデンの紫竹昭葉さんのお話しを書きました。美しさと幸せの例として。

その紫竹おばあちゃんが、2021年5月、永眠されました。94歳でした。
https://www.asahi.com/articles/ASP563PY1P56IIPE001.html

天に召されたのは、自宅の庭で日課の作業をしているときだったそうです。左手にコリアンダーの種、右手にスズメにあげるパンくずを握っておられたそうです。紫竹おばあちゃんらしい幸せなひとときですね。

心よりご冥福をお祈りいたします。今は、愛するご主人と天国で再会し、ご主人亡き後の30数年の軌跡を天国で大いに語り合っていらっしゃることと思います。紫竹ガーデンでたくさんの人に幸せを分けてくださった紫竹おばあちゃん、ありがとうございました。お会いできたことに心から感謝いたします。

実は今年の夏、母と一緒に、紫竹おばあちゃんの紫竹ガーデンを10年ぶりに再訪しようと思っていたんです。再会はできませんでした。でも、すてきな紫竹おばあちゃんとの思い出は一生忘れません。

以下に『幸せのメカニズム』のうち、紫竹おばあちゃんについて書いた部分を転載します。

紫竹おばあちゃんの幸福の庭

美しい心で美しいものを作っている方の具体例として、帯広の夢の庭造りで有名な紫竹昭葉さんをご紹介しましょう。まさに、美しいものを創造している方です。

紫竹さんは、もうすぐ90歳というご高齢ですが、元気いっぱい、幸せいっぱいの方です。『紫竹おばあちゃんの幸福の庭』(紫竹昭葉、NHK出版、2008年)などの著作でも有名です。

紫竹さんは、かつて、大学教授の妻として生きた方でした。ところが、58歳の時に、おしどり夫婦のようだったご主人を亡くされます。それから、悲しくて、悲しくで、毎日泣き暮らしたといいます。そして何年も経った時、娘さんに言われたそうです。

「お父さまが好きだったのは、太陽みたいなお母さまだったのでしょ。いつまでも、そうやって泣いていて、いいはずはないんじゃない?」

そこで、63歳のとき、「これから(平均寿命までの)25年間、何を目的に、どうやって生きていこう?」と自問自答したそうです。そのとき、心の底から湧き上がってきたのは、「花の庭を作りたい」という強い思い。「子供の頃、町の周りに広がっていた、野の花が自由に咲くお花畑を取り戻したい」という思い。

しかし、庭づくりの経験もなければ、資金力もない。若くもない。最初は親戚一同に反対されたそうです。しかし、持ち前の粘り強さで親戚を説得し、花畑作りが始まりました。畑と牧草地が続く十勝平野に1万5千坪の土地を手に入れ、花を植えはじめました。

それから25年。紫竹ガーデンは、今や、旭川、富良野、十勝を結ぶ北海道ガーデン街道の7つのガーデンの一つにも選ばれていて、毎年10万人もの人が訪れる観光地です。

私も、紫竹昭葉さんに広大な庭を案内して頂きました。

とにかく、植物たちは、伸び伸び。肥料は与えない。自然栽培です。種はまいたらまきっぱなし。自然に任せる。北海道の大平原に、おびただしい数の植物たちが、それはもう、伸び伸びと自由に育っています。力強く、美しい。ここを、紫竹さんは、毎日歩き回るのだといいます。そして、来られたお客さんと会話する。

私たち(慶應義塾大学農都共生ラボ視察団一行)にも、トマトやキュウリやアスパラガスやブルーベリーや食べられる黄色い花など、様々な植物を、「食べられるだけ摘んで食べなさい」といってくださり、みんなでわいわい言いながらその場で食べました。また、「花は好きなだけ摘んで持っていきなさい」と言ってくださいました。

ユーモラスで、ユニークで、力強く、お元気な、紫竹昭葉さん。案内していただく間もずっと、冗談の連発、大笑いの連続でした。そして、みんなを包み込むような優しさ。これからの高齢化社会の、まさにお手本のような、輝いている女性でした。

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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