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大坂なおみ選手の発言は歴史的転換点なのではないか?

大坂なおみ選手が全仏オープン試合後の記者会見を拒否。敗者へのインタビューが苦痛であると表明。これに対し、4大大会の主催者側は、4大大会からの追放も示唆。

もやもやしますね。

5/31のこのニュースに対し、松岡修造さんは報道ステーションでのニュースの中で、理解できないので本人からの説明を望むと答えていました。錦織圭さんもNEWS23の中でやや理解できないというようなニュアンスも表明していました。もちろん、ふたりともある程度の共感は示していましたが、戸惑っているようでした。

これに対して思うこと。

日本など東アジアの人は、セロトニントランスポーターSS型、すなわち心配性遺伝子を持っている人が多いことが知られています。文化心理学でいうところの個人主義的な傾向の強い国では心配性遺伝子を持っている人は少なく、集団主義的な傾向の強い国では心配性遺伝子を持っている人が多いことが知られています。

しかし、近代以降の世界では、個人主義的な傾向の強い欧米諸国を中心として国際秩序が構築されてきました。その結果として、個人主義的に自信にあふれた強い自己であることが当然とされがちです。学術的にはこれに警鐘を鳴らすのが文化心理学なのですが、一般的に言って、社会に学問の成果や最先端の考え方が浸透するまでには時間がかかります。

障害者や働き辛さを感じている人々に対して「どうして普通にできないの?」と聞くことは、昔は無知が原因で、タブーではなかったのですが、もはや差別や偏見とみなされるようになりました。

理由があって仕事がはかどらない社員に対して「遅いぞ、なにやってるんだ?」と言うことは、昔は許容範囲でしたが今ではハラスメントと呼ばれるようになりました。

一方で、過酷なインタビューを苦痛と感じる選手に対してインタビューをすることは、現時点では暴力や偏見やハラスメントとはみなされていないかもしれません。

しかし、「障害者や病気の人とは違って、世界ランキングトップレベルの人は立派な人だから困難に耐えられるはず」という風潮があるとしたら、それはまさに暴力・偏見・ハラスメントではないでしょうか。現代社会では、弱者への配慮が国際的には常識的になりつつあるものの、一見強者と思われている人への配慮はまだほとんど常識になっていないと思います。「弱者に配慮すべき、しかし強者には配慮しなくてもいい」というのは偏見だと思うんですよね。みんな、おなじ。みんな、弱者なんです。特に、心配性遺伝子を引き継ぐセンシティブさの強い人々にとって、現代社会の中心的な規範(独立して自立した強い個人こそ素晴らしいという個人主義的な風潮)は、暴力・偏見・ハラスメントに満ちているとも言えると思うのです。

スティーブン・マーフィー・重松先生が、スタンフォード大学での授業について話されていたエピソードが印象的でした。授業の後半に「では、質問のある人は?」と聞くと、スタンフォードのほとんどの学生は、手をあげるそうです。そこで、重松先生はこう言うそうです。「おいおい、そんなに手を挙げて自己主張するもんじゃない。日本では、みんな、手をあげないんだぞ。もっと、無理をせず、謙虚に、自分の心に従ったらどうだ?」。

インタビューにはっきりと答えられることこそが強い選手の強いあり方である、という個人主義的な世界観も、そろそろ見直すべき時が来ているのではないかと思います。

経済成長から、心の成長へ。本文とは一見関係ないようですが、大きな歴史的転換について語った「人類3.1」もぜひ見てください。近代西洋型ないしは個人主義重視型の世界から、全体を俯瞰してみんなの幸せを目指す社会へ。大坂なおみさんの今回の話は、歴史的転換点を表す一つの出来事なのではないかと私は思います。
https://youtu.be/Ljs8GUHY-bE

そんなわけで、大坂なおみさんを応援しています。世論の高まりにより、4大会主催者による追放という判断が覆ってほしいと思いつつ、上記の文脈により、大坂なおみさんの思いが国際的には理解されにくいのではないかと心配です。僕も心配性遺伝子を持っていますので。。。

心より願っています。全ての人が尊重される世界へと、世界が発展していきますように。

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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