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SDMと幸福学は関係あるのか!?

修士課程1年生のある学生から、「システムデザイン・マネジメントと幸福学って、関係あるんですか?」と聞かれました。本人は、素朴にそう思ったんでしょうが、私としてはショックでした。私の思いが、お膝下にも伝わっていないかもしれないなんて。

もちろん、答えは、YESです! もっと、伝えないと! と思ってこの記事を書いています(笑)。

人類が生まれてから20万年。俯瞰的に捉えると、人類の最大の目標は、どんな時代も「人類(および生きとし生けるもの)が幸せに生きること」だと思うのです。「社会の経済成長が重要だ」と言う人がいますが、経済成長は、人類が豊かで幸せな生活を獲得するためですよね。「個人の収入を増やすことが重要だ」という人もいますが、もちろん収入を増やすことの目的は個人が幸せになるためですよね。つまり、人類のあらゆる人の最大の目標が「幸せ」であることは自明だと思います(もしもそうではないと思う方がいらっしゃったら教えてください。とことん議論したいです!)。

しかし、2000年以上の前のアリストテレスの頃から、長い間、「幸せ」について考えることは哲学・思想・宗教の課題と考えられていました。科学的に分析したり、工学的に設計したりできるものではないと思われていたからです。しかし、コンピュータの発達と期を同じくして、1980年代から、幸せについての科学が進展しました。古くは心理学・統計学を中心とした学問として、近年ではAIやテクノロジーの対象として。「幸せ」についての学問が急速に進展したのです。これを、Well-Being(幸せ、健康、福祉)の科学と呼びましょう。

Well-Beingの科学は、予防医学だということもできます。「健康に気をつける」ように「幸せに気をつける」ことは、免疫力が高まり、健康になり、長寿になり、生産性が高まり、創造性が高まり、楽観的で、主体的で、利他的で、信頼でき、誠実で、自己肯定感が高く、多くの人に好かれ、人格的にもすぐれ、リーダーシップを発揮することにつながることが、世界中で行われてきた数々のwell-being研究によって明らかにされています。

もはや、心の「幸せ」は、体の「健康」と同じように、コントロールできる時代がやってきたのです。

だったら、ものづくり(製造業)、ことづくり(サービス業)、人づくり(教育)、コミュニティー作り(地域活性化)、職場づくり(幸福経営学)は、well-beingを陽に(explicitに)考慮したものにすべきだと思いませんか。学術的に、そのメカニズムについての学問を多くの人が学び実践する世界を作るべきだと思いませんか。私は確信しています。すべてのシステムデザインは、well-beingを考慮したものになるべきであると。なぜなら、これまでに述べてきたように、well-beingは人類にとって必須の要求であるのみならず、学術的にコントロール可能な変数だからです。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科は、あらゆるシステムをデザインしマネジメントするために2008年に生まれました。これまで述べてきたように、あらゆるシステムのデザイン(ものづくり、ことづくり、人づくり、コミュニティー作り、職場づくり)とそのマネジメントのために、最も考慮すべきことの一つは、well-beingです。つまり、SDMとwell-beingは深く関連していると私は思うのです。

私は、環境問題、貧困問題、パンデミックの問題など、well-beingの問題が逼迫する現代の人類にとって、最も重要な価値観だと思うから、well-beingの研究を行ってきたわけです。「SDGsと似てますね」と言われることがありますが、SDGsが脚光を浴びる前から、私はwell-beingが重要だと言ってきました。さらにいうと、ポストSDGsだとさえ思っています。MDGsからSDGsへと進展しましたが、現代とは、人類が「右肩上がりの成長から、定常的な繁栄へ」とパラダイムシフトする局面だと思うのです。クラウス・シュワブさんはそれを「グレート・リセット」と言いますし、ジョアンナ・メーシーさんは「グレート・ターニング」と言います。同じことです。京大の広井先生の「定常社会」も、原丈人さんの「公益資本主義」も、新井和宏さんの「共感資本」も、ハラリさんの「サピエンス全史」も、同じ文脈です。興味深いことに、実はSDGsはその名称に旧パラダイムと新パラダイムを含んでいます。旧パラダイム=デベロップメント(開発・成長)、新パラダイム=サステナブル(定常・成熟)。つまり、SDGsとは、期せずして、というか、皮肉にも、大きなパラダイムシフトの過渡期を表す名称なのです。パラダイムシフト後は、WGs(ウェルビーイング・ゴールズ)になるべきだと私は思います。ゴールという名称も相応しくないかもしれません。人類がいまここにwell-beingであること。Well-Being As Is。
(ちなみに、well-beingはSDGsの一つになっているため、SDGsのサブシステムであるようにも見えますが、SDGsでいうところのwell-beingは狭義の健康を表している傾向がありますので、私としては、次世代システムでは包含関係を逆転すべきだと思っています。)

そんなわけで、私が所属するシステムデザイン・マネジメント研究科と、私が研究する幸福学は、密接に関わっています。密接どころか、well-beingはSDMにとって最も重要なコンセプトのひとつだと、私は思っています。

考えてみてください。

私たちは、生まれてきました。

何の因果か、現代社会に、人間として、生まれてきました。

奇跡ですよね。

このことを私たちは謙虚に祝福すべきだと思うのです。素晴らしい奇跡。はかない奇跡。

線香花火のようです。人類史20万年、生命史40億年、地球史45億年、宇宙史138億年に比べると、私たちの人生はあっという間です。こんな、ほんの一瞬、生物として生き、しかも高等生物として五感で感じ、いろいろなことを考え、その結果を記述して残せる幸せ。有り難いとしかいいようがないではありませんか。

だったら、美しい世界を作ることに尽力してから、この舞台から去りたいと思いませんか。

私はそう思います。人類の一員として、生きとし生けるものの一員として、私は、この星を美しい星にするために全力を尽くしてから、この星の分子や原子に戻りたいと思います。

私は心から願っています。すべての生きとし生けるものが、そのささいな生を幸せに全うできますように。そのために、みんなが力を合わせて生きていけますように。そのためにこそ、サイエンス&テクノロジーから歴史学・民俗学まで、人類の叡智を利用できますように。マクロからミクロまで、近視眼的な争いがなくなりますように。学問も、仕事も、経済も、政治も、人間のすべての活動が、重箱の隅をつつくのではなく、根本的な目的である、人類の幸せを目指したものでありますように。これを読んでくださっているあなたや、生きとし生けるものが、人類と生きとし生けるものの幸せを第一に願いながら、生きていけますように。

そして、私は、そんな理想的な世界を創ることは可能だと思っています。願った社会は創れると思っています。みんなが一歩を踏み出せば。

あなたはどんな一歩を踏み出しますか? みんなでみんなが幸せな世界を創りましょう!

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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