FC2ブログ

Entries

古の武術に学ぶ無意識のちから

甲野善紀先生のとの対談本『古(いにしえ)の武術に学ぶ無意識のちから 広大な潜在能力の世界にアクセスする〝フロー〟への入り口』のまえがきを転載します!



はじめに

私は達人に興味がある。達人とお会いすると萌える。

それには学術的な背景がある。私はウェルビーイング(良き在り方、幸せ、健康、福利・福祉)についての研究を行なっているが、世界中のウェルビーイング研究の結果を簡単に述べると、要するに「幸せな人は性格のいい人」なのである。私のグループの調査によると、

・エネルギッシュ力=外向性・積極性
・フレンドリー力=協調性、利他性
・まじめ力=勤勉性・誠実性、粘り強さ
・情緒安定力=情緒安定性(⇔神経症傾向)
・おもしろがり力=知性・開放性・知的好奇心

が、高い人が幸せな人である。この五つは、ビッグファイブと言われる、よく知られた性格の因子である。

では、究極に幸せな人とは、どんな人か。
達人である。

ものすごく幸せな人とは、幸せの条件を高度に満たした人だと思うのである。いや、思うだけではない。私はウェルビーイングの研究者として、武道や茶道や華道の達人、名経営者、人格者、有名人、面白い人、いい人、などなど、さまざまな個性的な方にお会いしてきたが、やはり、達人は幸せであった。

のほほんと幸せにしているというわけではない。積極的で、粘り強く、知的好奇心に溢れ、要するにビッグファイブの多くを高いレベルで満たしている方々である。言い換えれば、私が明らかにした幸せの四つの因子(やってみよう、ありがとう、なんとかなる、ありのままに)を、凛として満たしている方々である。圧巻の人物である。

どうやら、現代日本において、達人は、たぶん昔よりも減っているようである。それは、近代西洋型の合理主義の結果、古き良きもの、本質的に人間にとって大切なことが、失われつつあるからなのではないだろうか。危機である。

私たちは、古き素晴らしきものを、忘れ去らずに、掘り起こしていくべきなのではないか。

そんな問題意識のもと、ワニブックスの「無意識シリーズ」の一環として古武術家の甲野善紀さんとの対談が実現したことは、私にとってこの上ない幸運であった。

本書をお読みいただくとわかるように、古武術とは、過去と現在をつなぎ合わせるための貴重な糸口である。甲野先生の信条は、「運命は完璧に決まっていて、同時に完璧に自由である」。この矛盾に満ちた主題を基軸に、甲野先生と私の無意識が呼応し合った。初めから終わりまで、ワクワクし続けた対談だった。

甲野先生の信条が、いわば縦糸である。ここに、古武術を中心とした様々な話題が横糸として織り成した。そして、縦糸の美しさを生かしたみごとな布地を織り上げることができた。そんな、感慨もひとしおの書である。読者の皆さんにも、布の文様が次第に姿を現す様をご堪能いただければ幸いである。

本書の中で、多様な形で論じられるように、古武術はアナロジー(類似性)に満ちている。ヒントに満ちている。つまり、俯瞰的に読めば、あらゆる分野において参考にすることのできる書になったと思う。

本書に出てくる対比のアナロジーを以下に列挙してみよう。本書の横糸のダイジェスト版である。

・古武術と、現代武術・スポーツ
・生きて死ぬための武術と、勝つためのスポーツ
・死と向き合うことと、死をタブー視すること
・新しい道を探求することと、常識にとらわれること
・科学でまだ解明されてないことと、解明されたと考えられていること
・一部の人だけにできることと、誰にでもできて一般性のあること
・技は盗むという学び方と、反復練習による学び方
・自ら考えて高みに到達する学びと、型にはまった学び
・努力させない教え方と、努力させる教え方
・学び続けることと、学ばなくなること
・変え続けることと、変えられなくなること
・無意識に委ねることと、意識で考えすぎること
・操った気になっていることと、操っていると思うこと
・「やろう」としないでやることと、「やろう」としてやること
・生態系の多様性を維持する自然農法と、作物の生育を最適化する現代型農業
・自然林のようなティール組織と、軍隊のようなピラミッド型・命令型組織
・ホリスティック(全体的)な古来東洋型と、分析・分割・分断に向かう近代西洋型
・人類を代表する一人として生きることと、ただの個人として生きること
・信じきれないことと、信じること
・納得して生きることと、流されて生きること
 
もちろん、これらは単なる対比ではない。本書で述べられるように、その両者を包み込んで飲み込むことが、矛盾包含型世界観につながるというべきであろう。「運命は完璧に決まっていて、同時に完璧に自由」なのである。やはり、達人との対話はすばらしい。皆様も、二度とない人生をお楽しみください。本書がその一助となっているなら、望外の幸せです。

前野 隆司
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://takashimaeno.blog.fc2.com/tb.php/497-691d8352

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

最新記事

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR