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世界幸せレポート(WORLD HAPPINESS REPORT)

【日本の幸福度は51位?】

「WORLD HAPPINESS REPORT 2017 によると日本の幸福度は51位」というニュースが3/20(世界幸福デー)から出回っていました。どんなデータで幸福度を測ったのでしょうか?

ハフィントンポストの記事:
http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/21/world-happiness_n_15505470.html
国連のランキングでは、調査対象にする国の国民の自由度や、1人あたりの国内総生産(GDP)、政治、社会福祉の制度などを元に2014〜2016年の「幸福度」を数値化し、ランク付けしている。

東洋経済オンラインの記事:
http://toyokeizai.net/articles/-/164020
ランキングは2012年に開始され、今年で5回目となる。155カ国を対象に、1人当たりの国内総生産(GDP)や健康寿命、困難時に信頼できる人がいるかどうか、政府や企業における汚職からの自由度などを手掛かりに幸福度を調査。

とあります。1人当たりの国内総生産(GDP)や健康寿命、困難時に信頼できる人がいるかどうか、政府や企業における汚職からの自由度などを調査してある比率で足しあわせた結果のように思えます。しかし、元のレポート
http://worldhappiness.report/ed/2017/
を見ると、人生満足度を(0が最低、10が最高として)0から10の11段階で答えてもらったものの平均値と書かれています。つまり、「主観的幸福(SWB, Subjective Well-Being)」です。多くの報道が、調査方法を誤って(あるいは誤解されやすい形で)報道しているようです。しかも、WEBで見たところ、過去のWorld Happiness Reportについての報道も、誤りが多いように見受けられました。
誤解が広まった原因は、結果の棒グラフが、各要因の積み上げのように見えるからかも知れません。実際は、まず、棒グラフ全体(主観的幸福)が先にあって、それを各要因がどのように説明するかを求めた、というものであって、積み上げではありません。

ご参考までに原典を挙げますと、この調査は、以下の質問に答えてもらったものとのことです。
“Please imagine a ladder, with steps numbered from 0 at the bottom to 10 at the top. The top of the ladder represents the best possible life for you and the bottom of the ladder represents the worst possible life for you. On which step of the ladder would you say you personally feel you stand at this time?”
”一番下が0、一番上が10のスケールをイメージして下さい。スケールの最大値10は可能な最高の生活を、最小値0は可能な最低の生活を表します。このスケール上であなたの位置はどこだと思いますか?”

この質問への答えの分布は、大雑把に言って、欧米の国では8付近に中心を持つ分布に、アジアの国では5付近に中心を持つ分布になることが知られています。ところが、面白いことに、日本では5と8にピークを持つ分布になります。

これから推測できることは、欧米の人々は「10よりは少し下かな?」という判断を、アジアの人々は「普通だから真ん中の5かな?」という判断を、日本の人々は両者が入り交じった判断をしているのではないかということです。つまり、満点から引き算する思考をする人々と、中庸との比較をする人々の幸福度を、一つの指標で測っている可能性があるということです。だとすると、このような測り方で調べた幸福度を国際比較することにはあまり意味がない可能性があると思います。

World Happiness Report の結果を真に受けると「日本の幸福度は先進国中最下位」とも言えますが、もしも、日本人は「平均5」的な答え方をする集団と「平均8」的な答え方をする集団の集まりだとすると、先進国中、最も「平均5」的な答え方をする国であるに過ぎない可能性があります。

いずれにせよ、他人と自分をあまり比べすぎる人は幸福度が低いことが知られているので、幸福度ランキングにはあまり振り回されず、それぞれの人がそれぞれの人らしく生き生きと暮らすことが重要だと思います。

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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