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愕然のワークショップ報告。人は制度により180度変容する。「金」か「ありがとう」か。

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今日は、私のワークショップ(WS)史上、最高に印象的なWSを体験しました。すごかった。なにしろ、ふたつのWSの対比が、すごかった。経済破綻と、祭り。

2016年1月17日、慶應SDMヒューマンラボでは『「人を幸せにするおカネ」を創るワークショップ』を開催し、約40名の方にお集まりいただきました。

参加者には、各チームが「利益の最大化」と「ありがとうの最大化」を目指す、極端な2つのビジネスゲームをそれぞれ40分ずつ体験してもらいました。

「利益最大化」ゲームでは、一部の部品価格がつり上げられた結果、市場が硬直化し、取引が行なえなくなり、皆が立ちすくみ、不信感や怒りが渦巻き、全体を非常に嫌な雰囲気が覆いました。みんなで力を合わせれば全体としての富は増えるのに、一部の価格つり上げによって、買い占めによる物不足のような市場硬直状態が出現したのでした。

一方の「ありがとう最大化」ゲームでは、様々な工夫が行なわれ、円滑でハートフルな売買が短期間で行なわれ、人々には愛と笑顔とふれあいがあふれ、実に暖かく幸せに満ちた理想郷のような市場が出現したのでした。大げさではなく、見ていて涙があふれるほどでした。特筆すべきは、「ありがとう最大化」ゲームでは、人々の幸福度が向上したのみならず、売買が早く進み、全体としての利益も増加していたことです。つまり、「(個別の)利益最大化」ゲーム以上に、「(全体の)利益最大化」になっていた点です。

要するに、社会のルールを少し変えるだけで、人の行動や感情はこんなにも変わるのか、ということを、極めて明確に、目の当たりにし、実感することのできた場でした。もちろんこうなることはある程度予測していたのですが、予想を超えた両極端な状態を、わずか40分のワークショップで創り出せることがわかった、という点が大きな気づきでした。近年、物の豊かさから心の豊かさへ、マネー経済からボランタリー経済へ、地位財から非地位財へ、金融資本から社会関係資本へ、右肩あがり一辺倒の社会から持続的な社会へ、画一化不幸社会から多様化幸福社会へ、と様々な言葉でいわれている社会構造変化の必要性を、体と心で感じることのできるワークショップを新たに世に問うた記念すべき日となりました。

どういうゲームだったのか、もう少し詳しく述べようと思っていましたが、好評につき、他でも実施することになりました。ネタバレになってしまいますので、ここでの公表は避けることとします。

イメージだけお伝えしますと、参加者はいくつかのグループに分かれて、それぞれ数10分間の、2つのビジネスゲームを行ないます。5グループは、ケーキ屋さん、皿屋さん、イチゴ屋さんなど、5つを集めると完成するケーキの要素のうちのひとつと、各人定められた額のお金を持っています。要素を売買して、完成品を市場で売るとお金をもらえる。で、最初のゲームでは「自分のチームの利益を最大化」するように、あとのゲームでは「ありがとうを最大化」するように、行動する。これだけです。
詳細にご興味のある方は、お問い合わせ下さい。

以下は、参加して下さったある方のフェースブックでのコメント。

日曜日の午後はいいオトナが50人近く集まってケーキ屋さんごっこをしました。

5つのチームそれぞれが、ケーキを完成させるための5つのパーツ(皿/スポンジ大/スポンジ小/イチゴ/ろうそく)の専門店の役割を与えられています。自分たちの商品を売り、他のお店から足りないパーツを買い集め、デコレーションケーキを完成させて事務局に買い取ってもらうという遊びです。

1回目のセッションは「利益を極大化する」通貨・ゼニーが流通する経済圏、2回目のセッションは「ありがとうを極大化する」通貨・エミーが流通する経済圏にいるという想定で同じゲームをしたのですが、あまりの展開の違いにびっくりでした。

「利益を極大化」するため、私のチームは「商品は売るけれど、他のパーツは一切買わない」と決めました。最初からデコレーションケーキを完成させることを放棄して、「支出をしないことで手元資金を減らさない」戦略です。他のチームは「売り惜しみして値段を吊り上げる」「現金販売をせず、物々交換にのみ応じる(このチームも手元の現金温存戦略)」などの作戦を立てていました。全体で30個のホールケーキができるパーツが市場に供給されていたのですが、策に溺れているうちにそれぞれのチームが大量の在庫を抱え、ケーキは12個しか完成せず。

2回目のセッションは、「ありがとう」を増やすことが目的なので、売り惜しみや、販売価格を吊り上げる必要はありません。だから、やりとりはスムース。どのチームも必要なパーツを買い揃え、次々とデコレーションケーキが完成していきました。しかも、やりとりがあるたびに笑顔と「ありがとう」が行き交い、なんだか空間全体が陽のエネルギーに包まれていました。

でも、1回目と2回目のセッションの最大の違いは、「時間」でした。1回目のセッションはチーム内での作戦構築に時間がかかり、他のチームとコミュニケーションしたり、モノを流通させるための時間が足りませんでした。2回目のセッションでは内輪の作戦会議に時間を浪費する必要がないし、モノが活発に流れるので、所定の時間内にほとんど全てのホールケーキが完成して、どのチームも時間を持て余していました。その分、他のチームと交流を深めることができました。全ての人に与えられている時間は平等だけど、自由に使える時間は平等ではありません。でも、利他的な発想をすることで、自由に使える時間が創出できるもんだなぁ…とめちゃくちゃ新鮮でした。エミーは利益の極大化を目指さないけれど、時間を創出できるということは、つまり価値を生み出しているってことで、それは、損益計算書には載らないけど、間違いなく利益なんだろうと思うのです。

ちなみに大人のケーキ屋さんごっこは、慶応大学SDM(System Design Management)大学院主催の「人をシアワセにするお金」について考えるワークショップでした。

もちろん、現実の世界をエミーだけが流通する経済圏に変えられるわけではないと思います。ただ、ゼニーの世界の中に、ほんの少しだけエミー的な要素を組み込むことで、世の中はずいぶん変わって見えてくるような気がしました。

同じチームになった人と最後に撮った記念写真。全員が初対面で、ワークショップが始まる前はみんな余所行きの顔だったけれど、エミー経済圏で一緒に過ごすうちに、みんないい笑顔になってました。
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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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