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IPPA2015 (Fourth World Congress on Positive Psychology)に参加

ポジティブ心理学の国際会議に初参加。2015年6月25-28日@オーランド(フロリダ)。

日本ポジティブ心理学協会の宇野カオリさん、廣瀬沙織さん、黒川千秋さん、東工大の上田紀行先生、千葉大の小林正弥先生、金沢工大の札野順先生、関西医科大の西垣悦代先生、東京医療保健大学の秋山美紀先生、慶應義塾大学医学部の三村將先生、あさかホスピタルの佐久間啓先生など、多くの日本人も参加していましたし、マーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman)、ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)、タル・ベン・シャハー(Tal Ben-Shahar)など、そうそうたるメンバーの講演も聴けて、充実の会議でした。参加者は1000人以上。アメリカ人が大多数という学会。ポジティブ心理学というだけあって、ポジティブな雰囲気にあふれ、みんな笑顔でフレンドリーでエネルギッシュ。いい勉強になりました。

チクセントミハイ
チクセントミハイ教授の講演の様子

コロナド
会場となったDisney’s Coronado Spring Resort@Orlando Florida

僕が行なっている幸福学(happiness studyまたはwell-being study)とかなり重なる分野ですが、幸福学は基本的には実証研究を主とする心理学研究であるのに対し、ポジティブ心理学は、心理学という名前はついていますが、どちらかというと科学の探究よりも実践に重点が置かれている活動だと思います。つまり、happiness study、well-being studyといわれる学術研究結果を実践に活かすための活動とでもいえばいいでしょうか。IPPAはInternational Positive Psychology Asociation(国際ポジティブ心理学協会)であり、Society(学術団体)ではありません。

IPPAは、良くも悪くもセリグマンが提唱したポジティブ心理学を拡げる集まりという傾向があり、いわゆる普通の学会とはすこし違う雰囲気でした。つまり、普通の学術的な学会のスタンスは基本的に中立で、様々なアプローチ、方法論、手法により様々な立場の者が議論を戦わせるのですが、ここではセリグマンの考え方が強く中心にあり、誤解を恐れずにいうと、セリグマンのファンが集まる場のようにも感じられました(間違っていたらすみません)。

たとえばセリグマンのPERMA(幸せのための5つの条件)は以下の通りです。

Positive emotions – 前向きな感情、よいフィーリング
Engagement – 今の活動に没入すること
Relationships – 人々と本質的につながっていること
Meaning – 目的のあるありよう
Achievement – 成し遂げ成功した感覚

僕の因子分析結果(幸せの4つの条件):

幸せの心的条件:
1 自己実現と成長
2 つながりと感謝
3 前向きと楽観
4 独立とマイペース

と何となく似ているのですが、微妙に違うとも言えます。

Pは、前向きと楽観に対応しそうです。
E(今の活動に没入すること)はチクセントミハイのフローに近そうです。
Rはつながりと感謝に近い。
M(意味、価値があること)、A(成就と成功)は、自己実現と成長に近いように思いますが、一致してはいません。

僕の”幸せの4因子”は日本人1500人への因子分析結果なので、特に思想などは含まれていないのに対し、セリグマンのPERMAは、多変量解析などの結果ではなく経験に基づいて構築されたフレームワークなので、セリグマンたちの主観的な想いが詰まっている感じがします。もっと言えば、近代西洋型個人主義が中心にありつつ東洋的な集団主義の影響を受けている、最近のアメリカ知識人層にありがちな考え方という印象を受けました。だからこの活動はだめと言うつもりは全くないのですが、やはり、上に述べた通り、一般的な学会活動とは違って、ある特定の考えを代表する集団の活動、という印象を受けたというのが正直な感想です。

ただし、セリグマン自身は、「世界中の人々を幸せにするのが目標だ」と言い切っていましたので、その想い自体は共感。感動。すばらしいです。

しかし、愛と自由の国アメリカの理念はすばらしいから世界中に広めるべきだと考える典型的アメリカの考え方と相似形をしているともいえます。これをこのまま日本に広めるのは無理があるのではないか、うまく日本流にモディファイすると日本でも流行るのではないか、と感じました。もっというと、世界のために、もっと日本の良さが使えるにもかかわらず、当然ながら、ポジティブ心理学にはその点の浸透が不足しているのではないか。『幸せの日本論』(角川新書、2015年)にも書きましたが、中心的理念を持たない日本からこそ、自国中心主義を超える考え方を提唱して世界のために広めるべきではないか。そんな想いを強くしました。

いずれにせよ、いかにしていろいろな方々と協力し、いかにして幸せな世界を創るか、についていろいろと考えることのできたいい機会でした。感謝。

ちょんまげ
写真は、博士課程学生のポスターの前で、ちょっと調子に乗りすぎている私

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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