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丸尾孝俊の幸福経営学

先日お会いしに行ったバリ島の大富豪兄貴、丸尾孝俊さんの経営学について書こう。

丸尾さんがおっしゃっていることは、僕がいつも思っていることとほとんど同じだと思えたが、圧倒的に違うのは経験から来る言葉だということ。僕は、学者として、一人で「考えて考えて考え抜いて」、人の心の存在論や倫理学についてある境地に達した。一方、丸尾さんは、多くの人とともに経営を「実践し実践し実践し抜いて」、そのあげくに類似した境地に達しておられる。基本的には、日本的な思想の理想に達しておられる。無我、無私、なすがまま、生かされる、和。経験に裏付けられているから、一点の曇りもない。完全な言動一致。僕は、世の中の他の教授陣と比べると圧倒的に実践的な教授である自負はあったが、丸尾さんに比べるとまだまだ実践不足であることを実感した。

今日は、経営学として脱帽した点を書こう。西洋流の、独立した個人が功利的に自己の利潤を追求するというあり方と違って、「ものを大事にすることの究極は、それを欲しいと言う人にあげてしまうこと」「今、例えば、ここの机が無くなっていたとしても、一瞬も驚かない。ああ、そうかと思うだけ。金、もの、名誉に対する執着がまったくない」「金を自分のところに集めたいなんて思わなくなったら、どんどん集まるようになった。金が集まってくると、トランプのババのように感じる。つまり、いかにしてすぐに使うか。投資するか。お金を人様のために使えば、廻り廻って帰ってくる。縁だ。」のように、無欲、無我、無私の発想の経営をされているところもすごいが、今回の滞在で最も感動したのは、人材の活かし方。以下に、僕からの質問と、それへの回答をふたつ紹介したい。

Q1 人の悪口、陰口は最低だから絶対ダメだとおっしゃいますが、指導の場合はどうなんですか。だめな部下がいたとして、「だめじゃないか。ここはこうしろ」と指導するときにネガティブな表現になるのはしかたないのでしょうか。

A1 うちへこい、いくらでも教えたる。こういうねん。そして、徹底的に、できないところを教えてやる。そういうやつがたくさんいたら、みんなうちに呼んで、みんなに教えてやればいい。口先だけの指導をするやつは、くずや。プライベートなんかいらん。そいつを、家族同様に、育ててやるんや。そうしたら、そいつは恩義に感じてくれるで。共有や。思いを共有した組織は強い。だれも裏切るもんなんかおらんで。

Q2 仕事のできない部下がいたとしますよね。その仕事が向いていない。どうすればいいでしょう。

A2 栄転や。左遷やないで。栄転させんねや。そいつに、そいつが力を発揮できる仕事を与えてみ。ごっつがんばりよるで。自分は窓際になるかと思っていたら、栄転した。なんでだろう。がんばろう。そうなるやろ。左遷させたらやる気がなくなる。組織の足手まといになる。栄転させたらやる気MAXや。栄転する部署が無い場合? そのときは、さっきの手や。「うちへこい」「おしえたる」や。自ら育ててやるねや。

いかがでしょう。人を、優秀と無能に分けない。徹底的に、いいところを伸ばす。その人の居場所を、クリエーティブ・イノベーティブに考える。ここでリーダーの力量が問われる。左遷とか、首を切るとか、そういうネガティブな仕打ちはしない。ぴったりな部署を見つける・作る。あるいは、徹底的に教育する。創造的に。そして自分のことのように。すると、組織に理想的な連帯が生まれる。人は、心よりお世話になった人を決して裏切らない。だから、徹底的に部下全員を信頼し、任せ、育てたら、最強の組織になる。一丸となった組織。しかも、互いに信頼し愛し合っている組織。理想のコミュニティーと言ってもいい。

大学教育についても同様な助言を頂いた。「自分の研究成果を目指す大学教授はいけてない。幸せそうな大学教授はほとんど見たことが無い。人を育てるねや。それに特化や。出来の悪い学生がおったら「うちへこい。」「おしえたる。」これや。みんな頑張って、一流になるで。ばーん、一流になって、みんな○○先生のおかげです、いいよるで。これや。先生の死んだ後で、先生の銅像立ちよるで。」

勢いで、くだらない質問をしてしまった。「丸尾さんも、丸尾さんの銅像を建てたいですか」
「自分で銅像を立てるやつはくずや。だいたい民衆に倒されよるで。感謝の思いは、みんなの心、魂の中にあるねや。だから、その人の死後に、みんなが銅像をたてんねや。せやからな、銅像立てよう思ってはいけません。みんなのためにやっていたら、死後にたつねや。

もうひとつ。「利他」という言葉についてどう思いますか。「なんかちがうな。やっぱり、共感・共有・共存や。情けは人のためならず(情けは廻り廻って自分に帰ってくる)や。」

政治哲学でいうところの共同体主義(コミュニタリアン)の極限のような方でした。

(注)関西弁は、丸尾さんの言葉を思い出しながら書きましたが、勉強不足のため、間違いがあるかも知れません。どなたかネイティブチェックしてください!

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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