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論文のねつ造事件の起きる土壌

学術論文のねつ造事件がいくつか世間を騒がせている。残念ながらこれは氷山の一角なのではないかと思う。

実は、何十年も前に、ある大学のある学生から相談を受けたことがあった。

「私の所属する研究室では、論文のねつ造が頻発しています。どうすればいいでしょうか。」

その研究室の教授は、その分野では有名なスター教授だった。今となっては、故人。当時、教授の名前は絶対に公表しないでほしい、といわれた上で相談を受けた。私もその時、公表すべきかどうか悩んだが、亡くなられた今となっては、名前を出すことよりも、ねつ造の起こりうる環境について公表すべきではないかと思い、ブログに書く次第である。

当時学生だったその方が教授に研究相談に行くと「そんな中途半端な結果は要らない。こういう結果が出るはずだから、ちゃんと結果を出してから持ってこい」と言われたという。厳しい研究室。で、学生たちの多くは、教授に内緒で、データを修正し、教授のお気に召す結果を作っていたというのである。教授は不正のことは全く知らない。学生たちの、組織ぐるみの行い。卒業・修了したいという思いから、学生たちが勝手に不正を行っていたというのである。もちろん全学生ではないが、その研究室の多くの学生が関わっていたとのこと。私も驚いたのでよく覚えている。
この例は、厳しすぎる教授の知らないところで学生たちがやっていたという例。論文ねつ造事件は世界中で発覚しており、組織ぐるみの例も少なくない。

大学組織や学術論文は、チェック機構が働きにくい構造になっている。大学の研究室は、それぞれの先生の小さなピラミッド。学術論文は、専門性が高く、一部の専門家のみが見る傾向がある。だから、闇に葬られたねつ造は、もしかしたら少なくないのではないかと思う。

ではどうすべきか。管理やチェックの強化もあるだろうが、組織内での信頼関係やオープンマインドといった、コミュニティーの風土づくりがひとつの解決策なのではないかと思う。

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プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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