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3 慶應SDM用語辞典「システムズエンジニアリング」

年初より、このブログのカテゴリ「SDM学の本の原稿」ではSDM学について連載することにしているが、2月16日に「システムデザイン・マネジメント」について書いて以来筆が止まっていた。初回(1月3日)のブログを見ると、

システムズエンジニアリング/SE/システム科学とシステム哲学/システミック/システマティック/創発/モデリング/シミュレーション/UML・SysML/モデルベーストデザイン/システムアーキテクティング/ベリフィケーションとバリデーション/ロジカルシンキング/MECE/ロジックツリー/帰結主義と非帰結主義/複雑系/カオス/不良設定問題/スモールワールド/ロングテール現象/IT革命/ニーズとシーズ/ユーザーエクスペリエンス/アジャイル開発/人間中心デザイン/インクルーシブデザイン/もの・ことづくり/サービス科学/環境共生・安全・福祉・幸福/デザイン思考/サブジェクト・オブジェクト・プロジェクト/協創/協働/集合知/フィールドワークとエスノグラフィー/ブレーンストーミング/イノベーション/共感のためのプロトタイピング/プレゼンテーション/ビジネススクールとデザインスクール/技術経営/インフォメーションとインテリジェンス/プロジェクトマネジメント/シナリオグラフ/構造シフト発想法/バリューグラフ/欲求連鎖分析/コンテキスト分析/シナリオ分析/根本原因分析/認知科学/幸福学と創造/

と用語解説が続いていくことになっている(対象となる用語は書き進めるうちに変わることがあります。あらかじめお断りしておきます)。書かねば。というわけで、今回は「システムズエンジニアリング」。

「システムズエンジニアリング」

慶應SDMの学問の中心には「システムズエプローチ」と「デザインアプローチ」がある。システムズアプローチの代表選手が「システムズエンジニアリング」である。ほかに「システム科学」や「システム哲学」がある。それらについては後で述べよう。ちなみに、「デザインアプローチ」の代表選手は「デザイン科学」や「デザイン思考」。

さて、システムズエンジニアリングとは何か。

残念ながら日本で SE(システムズエンジニア)というと情報系の技術者ないしはソフトウエア技術者を指すと考えられがちだ。しかし、本来の意味はもっと広い。

システムズエンジニアリングの国際評議会 INCOSE(International Council on Systems Engineering)によると、システムズエンジニアリングとは「システムを成功裏に実現させるための、複数のディシプリン(分野)にまたがるアプローチおよび手段」とある。英語でいうと、

An interdisciplinary approach and means to enable the realization of successful systems.

だ。前に述べたようにシステムは非常に広い概念なので、システムを実現するためのアプローチや手段は様々である。つまり、システムズエンジニアリングの守備範囲はきわめて広い。

システムズエンジニアリングには半世紀近い歴史がある。世界初のシステムズ・エンジニアリングの標準は 1969年に米国が空軍向けに制定したアメリカの軍用規格。同時期に行われていた人類初の月への有人宇宙飛行計画「アポロ計画」はシステムズ・エンジニアリングによって成功したといわれている。システム開発全体を複数の段階に分け、各段階で審査を行って次に進む「段階的プロジェクト計画」方式などはアポロ計画で確立され、今でもほぼ同様の方式が世界中の宇宙ミッションに適用されている。ここからわかるように、システムズエンジニアリングは、最初、宇宙開発や軍事部門で発展した。その後、都市開発やインターネット、民生用製品開発などにも応用されるようになり、現在ではざまざまな分野で用いられている。

ところが、日本に輸入される際に、なぜかITないしはソフトウエアのエンジニアリングと見なされるようになった。現代のシステムズエンジニアリングはITやソフトウエアを駆使するケースも多いので、その分野の人々が最初に輸入して広めたことが一因かもしれない。「慶應SDMの基盤の一つはシステムズエンジニアリング」というとSE養成大学院と誤解されることがあるが、慶應SDMでは一般に日本でSEといわれる人々だけを養成しているのではないのでご注意いただきたい。何度も述べたように、SEも、ハードウエアの技術者も、様々なシステムをデザインしているいわゆる「文系」の学生も、共に学ぶべき、インターディシプリナリ(interdisciplinary)な学問がシステムズエンジニアリングなのである。

では、SDM学とシステムズエンジニアリングはどこが異なるのだろうか。

システムズエンジニアリングを広くとらえるか狭くとらえるかによって見解は異なってくる。システムのところで述べたように、システムは何らかの目的に従って実現される対象であると考え、システムズエンジニアリングはその目的を達成するための学問であると考える、狭義のシステムズエンジニアリング(TSE, Traditional Systems Engineering)の定義に従うなら、銀河系や自然発生的な社会システムである”町”のような一義的な目的を持たないシステムは対象外ということになってしまう。
しかし、前にシステムのところで述べたように、広義のシステムズエンジニアリングでは、TSEとは異なり、システムオブシステムズのような問題も扱う。システムオブシステムズの最初のシステムは明確な目的を持たないシステム、後の方のシステムは明確な目的を持つシステムである。つまり、明確な目的を持つシステムの集合体であって、全体としては明確な単一の目的を持たない、インターネットや社会のようなシステムも、広義のシステムズエンジニアリングは扱う。そう捉えると、広義のシステムズエンジニアリングはSDM学と重なり合う。

要するに、システムズエンジニアリングは歴史的背景により3層構造になっている。すなわち、システムズエンジニアリングには広い定義と狭い定義があり、日本では狭い定義よりもさらに狭く、ITシステムの工学とらえられがちである。そして、SDM学はそれらすべてを包含する。言い換えれば、最も広い意味でのシステムズエンジニアリングとSDM学はほぼ同じスコープを持つと言っても過言ではないであろう。
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