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教えること、学ぶことの難しさ

書家の嶋田彩綜先生に、作品制作のための書き方のご指導をしていただきました。先生の言葉集。

「手で書いてはいけません。(立って書くとき)丹田の動きが膝から筆へと伝わるように」

「丹田から自由に出て来る自分のエネルギーを書にする。自分を信じて」

「二度と同じ作品はない。前にうまく行ったから同じようにしようという気持ちは捨てて。形を良くしようとしてはいけません。形のことは忘れ切る」

「前野さん、わかりますか?」

「はい。わかりますが、できません」(笑)

「わかるとは、さすがです」

できないけど論理としてはわかる理由は、他で経験しているから。ほんと、わかります。今回の気づきは、本質を頭で理解できたと思えても、違う分野になるとすぐには体で実行できないということ(あたりまえですけどね)。

とはいえ、本質はとっても似ているんですよ。

たとえば、僕が研究指導の時に学生に言っていること。

「審査の先生の質問に答えることが目的ではない。本当にやりたいことを成し遂げて、伝えよう」

「他人の言葉に振り回されるな。自分を信じて」

「全ての研究は違う。他の研究の型を真似してはだめ。それぞれ異なるから。自分の形を作れ」

あるいは、華道、茶道、能、ダンス、その他すべての芸術でも同じ。

かつてコンテンポラリーダンスの師匠、故黒澤美香先生にも言われたものです。

「形を作ろうとしてはだめ。無意識から出てくる形に従う。それがアート」

「真剣に。作ろうとしてはだめ。自分の中から出て来るものを感じて」

「時々、ほんのたまに、中から出てきたものが場と一体化する至福の時がある。これがダンス」
仏道も同じ。

悟りとは語り得るものではありません。主体的な経験ですから。

悟ろうとして悟れるものではありません。それを超越していますから。

確かに、すべての学びは、「教えないとわからない」、しかし「教えると、本質はわからない」という自己矛盾なんですよね〜。

要するに、教育とは、どこまでわかって、どこからはわからないかということを、早めに気づかせるパスに過ぎない。
ある研究をしている教え子兼親友とも同じ話をしました。語り得ないことを、研究としていかに伝えるか。これはむずかしい。しかし、不立文字と言い切ってしまうとコミュニティー以外には伝わらない。だから、どこまで伝わって、どこからは伝わらないかを、明確化してみるのが研究というアプローチなのではないか。

言葉では伝えきれないことについて、深く考えたり感じたりすることのできた日々でした。充実。日々是好日(にちにちこれこうじつ)。

つづく。

「なんくるないさ」の本当の意味

「なんくるないさ」の本当の意味を知っていますか?

沖縄方言の「なんくるないさ」。本当は、その前に「まくとぅーそーけー」が付くのだそうです。先日、沖縄の金城さんという方から教えていただきました。

幸せの因子分析をした私の研究では、幸せの4つの因子のひとつとして、なんとかなる因子(前向きと楽観の因子)という因子が求まりました。これがまさに「なんくるないさ」ですね。

では「なんくるないさ(なんとかなる)」はどのような構造になっているのでしょう。

楽観性の因子分析を行った私の論文によると、楽観性は、

1 明るい見通し 将来はきっといいという思い
2 不安のなさ 失敗するだろうと考えないありかた
3 切り替え 切り替えの得意な正確
4 自信 学んだり対処したりできるという自信
5 気楽思考 適当に大雑把に考えること

の5つの因子から成り立ちます。この5つめのみ、幸福度とは負の相関があります。つまり、なんとかなる(楽観性)とは、適当に大雑把に考えることではなく、前向きに自信を持ってチャレンジすることなのです。

さて、先ほどの、沖縄方言のなんくるないさ」。枕詞の「まくとぅーそーけー」とは、「正しいこと、誠の事をしていれば」という意味なんだそうです。

つまり、「まくとぅーそーけーなんくるないさ」とは「正しいこと、誠の事をしていれば、なんとかなる」という意味なのです。「やるべきことをすべてやった上であとは何とかなる」「人事を尽くして天命を待つ」のニュアンスに近い。つまり、楽観性の上の4つの因子に近い意味ですね。

実は英語のoptimisticも、適当で大雑把という意味はなく、沖縄の「なんくるないさ」ないしは楽観性の上の4つの因子に近い概念です。

そういうわけなので、「なんとかなる」「なんくるないさ」の誤解なきよう。やるべきことは全てやった上での前向きな楽観性が重要なのです。

「引き算」のすすめ

「引き算」というワークがあります。もともとは、慶應SDM(システムデザイン・マネジメント研究科)のデザインプロジェクトという授業で坂倉杏介先生が行っていたワークで、拙著『幸せのメカニズム』でも述べています。私は今年もMCC(慶應丸の内シティーキャンパス)の講座「デザイン×システム思考」の中で実施しました。

どんなワークかというと「あなたにとって大切なものを1週間使わないで過ごしてみてください」というものです。皆さんもぜひやってみてください。たくさんの気づきがあります。

先日のMCC受講生の引き算の一部をご紹介しましょう。

(1) 歯磨き粉
練り歯磨きなしで歯磨きをしてみた。ハッカの香りが恋しくて、自分はハッカが歯全体に広がることで磨けているという感覚を得ていたことに気付いた。逆に、発火の香りがないことで、きれいに磨けているかどうかに注力できることに気付いた。

(2) 日経新聞
意外と自分はニュースではなくいろいろな人の動向を見るために新聞を読んでいたことに気付いた。ニュースとしては困らなかったが、人についての情報をもっと欲しいという気分になった。悲惨な事件で心を乱されることが減った感覚もあった。

(3) チョコレート
ものすごいチョコレート好きだったがやめてみると体重が減った。しかし、ハチミツに走ってしまった。

(4) コーヒー
禁断症状に苦しむのではないかと最初は不安でいっぱいになった。しかし、妻の「深夜にでもコンビニにコーヒーを買いに行くあなたにできるわけないでしょ!」と言われたことへの対抗意識がすごいパワーになり、問題なく乗り切れた。思わず、対抗意識の影響力の強さを思い知った。

(5) 炭酸水
炭酸水を大量に飲んでいたのをやめてみた。辛くてたまらなかった。今晩ハイボールを飲むのが楽しみで仕方がない。

(6) パン
朝食はいつもパンだったが、ご飯と味噌汁と焼いたシャケにしてみたら面倒くさかったしコーヒーが合わなくてショック。そこで、ヨーグルトとフルーツたっぷりとコーヒーにしたら、別にパンじゃなくても1週間をすてきに過ごせた。

(7) 肉
大好きな肉を引き算。いきなり妻に、「冷蔵庫には大量の肉がある。どうして勝手にそんなことをするの!?」と叱られた。子供たちが「焼肉を食べに行きたい」と言うのにも困った。自分が肉を我慢することの困難よりも、肉がいかに家族の人間関係のために大切なものであるのかということに気付いた。

(8) ラジオ
ラジオを聴くのが好きだったが、引き算してみるととても辛かった。ラジオの内容というよりも、一人暮らしの家の中で、人の声を聞くことで安心する効果を得ていたのだと気付いた。

(9) テレビ
家ではいつもテレビをつけていたが、引き算してみるとどうということはなかった。ただ惰性になっていただけだった。しかも、実は土日はもともとテレビをつけていなかったということにも気付いた。

(10) カバン
いろいろなものの入っている鞄をやめて風呂敷にしてみたが、特に困ることはなかった。意外と拍子抜けで、いざという時のためにいろいろなものを入れた重い鞄を持ち歩いていたことを考え直そうと思う。

(11) ネットでの検索
わからないことがあるとすぐにネットで検索していたが、1週間の間は時間をかけて辞書で調べた。すると、調べた内容についての記憶の定着率が高まった気がする。ネット検索は簡便な分、忘れやすいのではないか。

(12) 子供への小言
小言を言わなくても実は子供は結構いい子にしていて、子供のいいところが見えてきた。自分がいかに子供のネガティブな側面に注目していたのかということに気付いた。

(13) 子供と同僚へのネガティブな言葉
子供と同僚にネガティブな言葉を言わないようにしたが、うまくできたと思う。子供に対してポジティブにしていると、子供が私を困らせることが少なくなったことに驚いた。しかし、夫と喧嘩になった。ストレスを無意識のうちに夫に向けていたことに気付いて反省した。

(14) 夜更かし
これまで12時以降に寝ていたが10時に寝ることにした。しかし、寝られなくて逆に不規則になり、従来以上に夜更かしになってしまった。

いかがでしょう? 人によって色々と気づきが異なるのが面白いところです。普通に考えるとコーヒーのほうが炭酸水よりも習慣性があるように思いますが、人によっては炭酸水の禁断症状が大きかったり、テレビをやめたりラジオをやめたりするとその影響が違ったり、思わず予定外の人間関係の変化に気づいたり。

このワークは、デザイン思考の「観察(observation)」のワークとして行っているものです。大切だと思っているものを引き算することで、何か想定外のことに気づくのではないか。無意識のうちに自分が何をしているのか、何を気にしているのか、について気づくのではないか。その気づきを新たなイノベーションのために使えるのではないか。そんな、気づき(insight)のためのワークです。

過去の実践者たちも、いろいろな気づきを得ていました。エレベータとエスカレータを引き算してみるとビルの非常階段がどこにあるかを見つけたり、手足を引き算して車椅子で生活したら人々の優しさに気づいたり、靴を引き算したら意外とみんな靴を履いていないことに気づかないということに気付いたり。

考えてみると、私たちはいつか必ず死にます。そのとき、何も天国に持っていくことはできません。現世で何をため込んでも、結局は全てを引き算して旅立つのです。環境問題や少子化問題により、物質的な豊かさを追い求め続けることは不適切となった現代社会。もっと様々な引き算をすべきなのではないでしょうか。執着を手放すべきなのではないでしょうか。近藤麻理恵さんの「ときめかないものは断捨離する」というお片付け手法が世界で注目されているのも、同じ文脈なのではないでしょうか。

みなさんも、何か大切なものを引き算して過ごしてみませんか。きっと思いもよらない気づきがありますよ。





ウェルビーイングデザイン研究会

2021年9月から、ウェルビーイングデザイン研究会、始めます。

WEBページ
https://wellbeing-design-lab.mystrikingly.com/
(ただし、近日中に正式ページに置き換え予定です)

公開用Facebookグループページ
https://www.facebook.com/groups/2915692118669744

ウェルビーイング・チャット・チャレンジ

2021年7月にfcebookで毎日「ウェルビーイング・チャット・チャレンジ」という活動を行いました。ウェルビーイングに関連する31個の問いへの答えをコメント欄にみんなで書くチャレンジです。たくさんの方々からすてきなご回答をいただきました。ありがとうございました。心が温まりました。読んでいるだけで幸せでした。人間って、すばらしい。

そこで、全チャレンジのフェースブックURLをここに掲載します。いろいろな方のすてきで示唆に富むコメントをじっくりと読んで味わってみてください。みんなの知恵からみんなで学ぶ機会にしたいと思います。また、付け加えたいことがあったら、新たにコメント欄に書き込んでみてください。よろしくお願いいたします!

1. 夢や目標は何ですか?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4074434789300912

2. 日頃から何に感謝していますか?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4077033439041047

3. あなたは自分や他人に対してネガティブ? ポジティブ? ポジティブであるために気を付けていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4079606818783709

4. 人と自分を比較しないコツは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4082507601826964

5. ワクワクしていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4085201838224207

6. 創造性を発揮する秘訣は?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4087888731288851

7. 今ここに集中するための秘訣は?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4090369814374076

8. 広い視野で物事をとらえる秘訣は?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4093170340760690

9. 金・モノ・地位に囚われすぎないために行っていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4095973843813673

10. 他の人に対してどんな親切な行為を心がけていますか?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4098780473533010

11. 楽観的に物事をとらえる秘訣は?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4101620903248967

12. 自然に触れ合うために行っていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4104390772971980

13. あなたを大切に思ってくれている人は誰?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4107125916031799

14. 社会の要請に応えていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4109958062415251

15. 物事を人のせいにしてしまわないために気を付けていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4112687055475685

16. 自分の強みをさらに強めるために行っていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4114654531945604

17. 恩送りとしてやっていること・やってみたいことは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4117447011666356

18. 将来やってみたいことは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4120208264723564

19. 自分の性格の気になる点をいい点に置き換えてみると?(リフレーム)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4122931857784538

20. 他の人の結果を褒めるのではなくプロセスを勇気づけるために使っている言葉は?(勇気づけ)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4125643904180000

21. 他人の立場に立って考えるために行っていることは?(主観主義)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4128501003894290

22. 失敗の原因を探すのではなく、努力から得られる良い未来を探るために行っていることは?(目的論)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4131338063610584

23. 人を信じ自分を信じるために行っていることは?(共同体感覚)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4134275413316849

24. 貢献感を感じていることは?(貢献感)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4137309196346804

25. 自分のいいところも悪いところも受容するために心がけていることは?(自己受容)
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4140199629391094

26. あなたの人間関係上の課題は何? そしてそれは、どうなったらいい?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4143797219031335

27. なんとかなるとチャレンジしていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4146681508742906

28. 感情的になりすぎないために気を付けていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4149583928452664

29.「本当になりたい自分」に近づくために行っていることは?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4152405664837157

30. 世界中の生きとし生けるものを信じる秘訣は?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4155264191217971

31. 愛に満ちあふれているのはなぜ?
https://www.facebook.com/takashi.maeno/posts/4158181094259614

『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』(ワニ・プラス)の「まえがき」

2021年7月17日発売の『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』(ワニ・プラス)の「まえがき」をここに掲載します。

まえがき

幸せに生きるための人類の知恵を百年分詰め込んだ本が、できました!

精神科医で心理学者、社会理論家だったアルフレート・アドラー先生が生きたのは、一八七〇年から一九三七年。つまり、アドラー心理学は、ざっと百年前の心理学・哲学です。一方、本書の著者である平本あきおさんは一九六五年生まれ、私は一九六二年生まれですから、本書の著者はアドラー先生から約百年後を生きた二人です。

本書が完成した今、振り返ってみると、本書は、時代を超えた三人の共同作業でした。そのことを、僭越ながら誇りに思います。

この本を手に取ってくださった方々に、私の三つの思いをお伝えしたいと思います。三つの思いは、本書の三つの特徴でもあります。

1 アドラー心理学と幸福学を俯瞰しわかりやすく対応づける本であること
2 わかりやすく役に立つ実践例を述べる本であること
3 平本さんと僕から心を込めて皆さんに贈る本であること

1つ目は、アドラー心理学と幸福学を俯瞰しわかりやすく対応づける本であることです。つまり、百年前からのアドラー心理学と現代の幸福学を結びつけながら学ぶことのできる初めての本です。

平本さんはアドラー心理学のエキスパート。私は、現代の心理学である幸福学(ウェルビーイング・スタディー)の研究者。この二人のやり取りの絶妙さをお楽しみいただきながら、幸せに生きることについての理解を深めていただきたいと思います。
はっきり言って、アドラーの頃の心理学と現代の心理学は異なります。当時はコンピュータもない頃で、心理学は哲学の一分野でした。一方で、現代の実証主義的な心理学は、科学の一分野です。

その違いの一例を挙げると、アドラーの共同体感覚というのは哲学であり、これが正しいか間違いかを現代の心理学によって科学的に検証するような範疇のものではない、ということができます。

だから、アドラー心理学と現代の実証主義的心理学を対応づけようとするような困難に挑む本はこれまでにありませんでした。本書は、そんな壮大な課題に果敢に挑んでいます。というとすごいことのようですが、実のところは、僕が平本さんにアドラー心理学と現代心理学の共通点と違いについてしつこく何度も問いただすことによって、その点が明確になっていくという仕掛けになっています(笑)。
現代の心理学は実証主義的な科学だと述べましたが、詳細まで見ていくと一枚岩ではありません。現代の心理学のうち、臨床心理学は、少し違った傾向を持った分野です。臨床心理学では、科学的な真理を明らかにすることよりも、患者を治す(ないしは、人をよりよい状態にする)ことを重視する傾向があります。
アドラー心理学は、現在の臨床心理学の源流の一つに位置付けられます。このような位置づけも、本書では、アドラー心理学と現代実証主義的心理学の比較の中から、明らかになっていきます。学問分野についての理解が進むことも、本書の醍醐味の一つといっていいでしょう。本書の中で何度も出てきますが、「アドラー心理学は正しいことよりも患者を治すことに重点を置いた心理学である」という点は、眼から鱗です。この点は、アドラー心理学を学ぶ方には必ず押さえておいてほしい点です。

それから、本書は俯瞰的な視点からアドラー心理学と現代の心理学を対応づける本であるという点に、ぜひご注目ください。
実は、私はこれまでに何冊もアドラー心理学に関する書籍や文章を読んできましたが、なんだかややこしくてわかりにくいという印象を持ってきました。もちろん、これは私の理解不足によるものですが、なぜわかりにくいのでしょう? それは、アドラー心理学が多くの要素から成りたっているからだと思います。

ある人は「目的論」こそがアドラーの醍醐味だと言います。読んでみると、確かに目的論は面白い。「子供が泣くのは悲しいからではなく、お母さんの気を引くという目的のため」と説明されると、またまた眼から鱗です。アドラー心理学は、現代の心理学では見たこともないような新たな視点をもたらしてくれます。アドラー心理学、すごい。そう感じさせてくれます。

しかし、他の本を読むと、「共同体感覚」こそが重要だと書かれています。読むと、人は皆、共同体感覚を持っていて、それを思い出していない人もいるが、思い出していくと幸せになっていくと書かれています。わかる〜。共同体感覚の要素であるといわれている自己受容、他者信頼、他者貢献感の三つも、よくわかります。身に染みます。私が提唱している幸せの四つの因子とも整合します。やはり人間が幸せになるために重要なのは、自分と、まわりの仲間と、世界の生きとし生けるものが、一緒に生きていることだよね〜、と共感します。百年前にこれを論じたアドラー、尊敬します。すごい。

またまた他の本を読んでみると、「勇気づけ」(エンカレッジ)と「勇気くじき」(ディスカレッジ)の対比がアドラーの真髄だと書かれています。勇気づけと勇気くじきという和訳はなんとなく特殊な感じもしますが、エンカレッジが必要なことはよくわかります。やはり、叱るのではなく、褒めるのでもなく、エンカレッジだよね〜、と共感します。アドラー、すごい〜。

しかし、アドラーについて知れば知るほど、いろいろあるけど「要するにアドラーってなんなの?」という問いが湧いてきて、なんだかもやもやした想いが残っていたものでした。

これに対し、平本さんは、わかりやすく全体像を示してくださいました。

アドラー最新

く〜。この図ですよ、この図。さすが、アドラー心理学の第一人者のひとり。この図こそ、アドラーを学ぶすべての人が学んでおくべき、アドラーの全体像です。この本の読者の方には、この図を、徹底的に、頭に刻んでいただきたいと思います。というか、読んでいくうちに、刻まれます。
私もそうでした。頭の中に、アドラーのフレームワークが叩き込まれることによって、心の問題への対処法が明確に整理されました。ご安心ください。この図は、本書の中でしつこいほど何度も出てきます。このため、本書を熱心に読んでいただけば、自然とこの図は頭に入っていくことでしょう。

私も、この図が頭に叩き込まれてからは、他の本や論文で述べられているアドラー心理学がスイスイと理解できるようになりました。なるほど、勇気づけ、目的論、共同体感覚は、ここにこういう理由で配置されているのね、という全体俯瞰的な理解ができるようになりました。アドラーと平本さん、ありがとう。

私はもともと俯瞰の好きな研究者でして、幸せの四つの因子の研究なども、そんな私の特徴を表しています。一方で、多くの研究者は「広く浅く」よりも「深く狭く」が好きな傾向があります。俯瞰よりも、詳細。幸せ(ウェルビーイング)の研究者も同様で、みなさん、深く狭く真理を追及されます。

たとえば、幸福学研究の第一人者であったエド・ディーナー先生(一九四六〜二〇二一)もホームページの連絡先の部分に以下のように書かれていました。

ディーナー博士の研究は基礎科学的レベルにあります。したがって、彼の仕事の多くはテクニカルであり、「幸せになる方法」に容易に翻訳できるものではありません。ディーナー博士は幸福について彼が知っていることに関して議論する意欲はありますが、彼がデータを持っていない質問について推測することは望みません。
(https://eddiener.com/contact)

幸福学の第一人者でドクター・ハピネスとも称されるディーナーが「自分の研究は科学的かつテクニカルであり、どうすれば幸せになれるかという問いは私のやりたいことの範疇外である」と明記されている点に、現代実証主義的心理学者の典型的な立場が表明されていて面白いですね。
もちろん、アドラーは逆です。私もです。私はもともと工学系出身で、博士号の学位名は博士(工学)。工学とは、科学の成果を役に立つ形で応用する学問。だから、幸福学の全体像をわかりやすくまとめ、使いやすい形にして提供することに興味があるのです。ポジティブ心理学と呼ばれる分野も同様です。実践の心理学であり臨床心理学がルーツであることもあって、ポジティブ心理学の研究者も実践的であることを重視すると言えるでしょう。

話を戻しましょう。以上のような理由により、百年前のアドラーの考えを明確化し発展させたアドラー心理学の全体像と、私が行っている幸福学の全体像は、似ている面があります。
私が因子分析の結果求めた幸せの四つの因子とアドラー心理学のどこが対応しているのか、については本文中に述べましたので、謎解きをぜひお楽しみください。一方、最も異なる点は、アドラー心理学は哲学ですが、私の心理学は科学であるという点だと思います。
アドラー心理学は、全体像を示した図にあるように、まず、共同体感覚という哲学が基盤にあって、その上に理論と技法が展開されています。
私の幸せの四つの因子は、統計学に基づいた分析結果であって、これについて考察する結果として、「やりがい、つながり、チャレンジ、自分らしさの溢れた人が幸せな人である」という全体像が導き出されたという形になっています。
構造が逆です。つまり、哲学から始めて実践で終わるか、科学から始めて哲学で終わるか、という違いが、アドラー心理学と私の幸福学の最大の相違点だといえるでしょう。

さて、本書の二つめのポイントについて述べましょう。「わかりやすく役に立つ実践例を述べる本であること」です。すでに述べたように、アドラー心理学は使ってもらうための心理学です。アドラーは自らの心理学のことを工学であるとさえ言っています。平本さんも実践者。もちろん私も工学者。三人とも実践者です。科学の基礎を突き詰めることももちろん大切ですが、科学的に(あるいは哲学的に)明らかにされたことを、実際に使用できる形にしてこそ、人々が幸せになるために役立つという想いで一致しています。そんなことを感じていただける著書となりました。
なかでも圧巻なのは、平本さんによるわかりやすい実践例の数々。あたかも光景が目に浮かぶような形で、よくある悩みの具体的解決法がたっぷりと述べられています。
個人的には、事例の部分はロールプレイしながら読むのがおすすめだと思います。ぜひ、いい例と悪い例をだれかと声に出してやりとりしてみて、その心理的な違いを実感していただければと思います。
私もゲラを読みながら、妻とロールプレイしてみました。すると、身につきます。いつか同じような場面に遭遇した時に、アドラー流に振舞うことができます。そんな、今すぐ使える実践的な本です。あなたの課題が解決すること、請け合いです。
もうひとつ、圧巻なのは、平本さんへの「その実践例は哲学や理論のどことどう関係するのですか?」という質問を何度かしたのに対し、全体像の図のすべてと関係することを、次から次へと溢れ出てくる勢いで説明されていたことです。いかに深くアドラー心理学の体系を平本さんが身につけていることか。本文をお読みいただくと、平本さんの愛と熱意とエネルギーを感じていただけると思います。

そして、三つ目の特徴。平本さんと僕から心を込めて皆さんに贈る本であること。
私は、実証主義的な科学の研究者にしては熱苦しすぎる、と批判されることがあります(笑)。確かに、ディーナー先生のようなスタンスが科学研究者の基本であるという立場から私を見ると、個人的な考えを熱く語りすぎると感じられるのかもしれません。しかし、私の出自は、先ほども述べたように工学です。もっというと、民間企業にもいた経験があり、工学は具体的に使うところまで実践してこそ意味があるという思いがあります。つまり、私は、科学・工学・実践をつなぐことを行っている研究者なのです。
さらにいうと、本を書く時、私は、研究者である以前に、心を持った人間です。一人の研究者としてでははく、一人の生きる人間として、すべての人の幸せのために、本書を書いているのです。
そして、本書をお読みいただくとおわかりになると思いますが、平本さんも、人々が幸せに生きる世界を作ることを目的に活動されている方です。生きる目的自体が共同体感覚です。私と同じです。だからこそ、意気投合し、みんなのために、この本を書いているのです。必要な方にこの熱い思いが届くことを心より願っています。

これまで幸福学やポジティブ心理学を学んでこられた方にも、そうでない方にも、読んでいただきたい書です。百年の時を経て完成されたアドラー心理学の体系をご理解いただくことによって、思考と知識の幅が広がるでしょう。また、すでにアドラー心理学に詳しい方にも、読んでいただきたい書です。全体俯瞰と平本流実践例により、理解が深まることでしょう。

心より祈っています。すべての人が、自分を大切にし(自己受容)、まわりのみんなと信頼し合い(他者信頼)、社会のために何か行動できますように(貢献感)。誰もが人生の主人公(創造的自己)として未来を思い描けますように(目的論)。あなたの想いが尊重され(主観主義)、必要とされますように(対人関係論)。すべての人の行いにすばらしい意味があることを皆が認め合う世界(全体論)を実現できますように。そして、すべての生きとし生けるものが幸せに生きられますように(共同体感覚)。本書がそのための一助となっていますように。みんなつながっていますね。あなたが幸せでありますように(幸福学)。

前野 隆司

logmiの記事(前野隆司)のまとめ

ログミー(logmi)に僕の記事がまとまってアーカイブされていることを発見。
https://logmi.jp/persons/3608

ご覧ください!


1. 2017年11月14日に開催されたウイングアークフォーラム2017東京での講演内容。働き方改革から幸せな会社の事例まで、かなり詳しいです。

幸せな社員は創造性3倍、労働生産性1.3倍
働き方改革における幸福度の重要性を説く
https://logmi.jp/business/articles/243410

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2. 2019年08月27日に開催された「人材育成シンポジウム2019/未来をつかむ」での講演。慶應義塾大学の宮田裕章教授らと登壇しています。

2-1 イノベーションの成功確率は「1000分の3」の世界
慶大・前野隆司教授が説く、打率を上げる思考法
https://logmi.jp/business/articles/322470

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2-2 日本の「世界幸福度ランキング」はなぜ低い?
幸福学の第一人者が読み解く“深い事情”
https://logmi.jp/business/articles/322472

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3. 2018年7月24日、エール株式会社主催のイベント「日本らしさを活かす次世代の組織マネジメントについて考える」での講演内容です。

3-1「幸せな会社」はどうすればつくれるか
前野隆司氏が語る、個人主義と集団主義のバランスの大切さ
https://logmi.jp/business/articles/316133

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3-2「日本は世界一サステナブルな調和・平和の国」
幸福学の第一人者が見出した日本の長所
https://logmi.jp/business/articles/319126

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4. 2018年09月06日に開催された「Cybozu Days 2018 福岡」においてサイボウズの青野社長と対談したときの内容です。

4-1 日本の働き方改革には盲点がある
幸福学・前野教授×サイボウズ青野氏が解き明かす「幸せの4つの因子」
https://logmi.jp/business/articles/320453

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4-2 社員を信用して任せる会社ほど、ムダな仕事が少ない
幸福学の第一人者が語る「いい会社」の共通点
https://logmi.jp/business/articles/320454

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紫竹おばあちゃん、ありがとう

紫竹おばあちゃん、ありがとう。

2013年に出した『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』 (講談社現代新書) の228ページから230ページまで、北海道の紫竹ガーデンの紫竹昭葉さんのお話しを書きました。美しさと幸せの例として。

その紫竹おばあちゃんが、2021年5月、永眠されました。94歳でした。
https://www.asahi.com/articles/ASP563PY1P56IIPE001.html

天に召されたのは、自宅の庭で日課の作業をしているときだったそうです。左手にコリアンダーの種、右手にスズメにあげるパンくずを握っておられたそうです。紫竹おばあちゃんらしい幸せなひとときですね。

心よりご冥福をお祈りいたします。今は、愛するご主人と天国で再会し、ご主人亡き後の30数年の軌跡を天国で大いに語り合っていらっしゃることと思います。紫竹ガーデンでたくさんの人に幸せを分けてくださった紫竹おばあちゃん、ありがとうございました。お会いできたことに心から感謝いたします。

実は今年の夏、母と一緒に、紫竹おばあちゃんの紫竹ガーデンを10年ぶりに再訪しようと思っていたんです。再会はできませんでした。でも、すてきな紫竹おばあちゃんとの思い出は一生忘れません。

以下に『幸せのメカニズム』のうち、紫竹おばあちゃんについて書いた部分を転載します。

紫竹おばあちゃんの幸福の庭

美しい心で美しいものを作っている方の具体例として、帯広の夢の庭造りで有名な紫竹昭葉さんをご紹介しましょう。まさに、美しいものを創造している方です。

紫竹さんは、もうすぐ90歳というご高齢ですが、元気いっぱい、幸せいっぱいの方です。『紫竹おばあちゃんの幸福の庭』(紫竹昭葉、NHK出版、2008年)などの著作でも有名です。

紫竹さんは、かつて、大学教授の妻として生きた方でした。ところが、58歳の時に、おしどり夫婦のようだったご主人を亡くされます。それから、悲しくて、悲しくで、毎日泣き暮らしたといいます。そして何年も経った時、娘さんに言われたそうです。

「お父さまが好きだったのは、太陽みたいなお母さまだったのでしょ。いつまでも、そうやって泣いていて、いいはずはないんじゃない?」

そこで、63歳のとき、「これから(平均寿命までの)25年間、何を目的に、どうやって生きていこう?」と自問自答したそうです。そのとき、心の底から湧き上がってきたのは、「花の庭を作りたい」という強い思い。「子供の頃、町の周りに広がっていた、野の花が自由に咲くお花畑を取り戻したい」という思い。

しかし、庭づくりの経験もなければ、資金力もない。若くもない。最初は親戚一同に反対されたそうです。しかし、持ち前の粘り強さで親戚を説得し、花畑作りが始まりました。畑と牧草地が続く十勝平野に1万5千坪の土地を手に入れ、花を植えはじめました。

それから25年。紫竹ガーデンは、今や、旭川、富良野、十勝を結ぶ北海道ガーデン街道の7つのガーデンの一つにも選ばれていて、毎年10万人もの人が訪れる観光地です。

私も、紫竹昭葉さんに広大な庭を案内して頂きました。

とにかく、植物たちは、伸び伸び。肥料は与えない。自然栽培です。種はまいたらまきっぱなし。自然に任せる。北海道の大平原に、おびただしい数の植物たちが、それはもう、伸び伸びと自由に育っています。力強く、美しい。ここを、紫竹さんは、毎日歩き回るのだといいます。そして、来られたお客さんと会話する。

私たち(慶應義塾大学農都共生ラボ視察団一行)にも、トマトやキュウリやアスパラガスやブルーベリーや食べられる黄色い花など、様々な植物を、「食べられるだけ摘んで食べなさい」といってくださり、みんなでわいわい言いながらその場で食べました。また、「花は好きなだけ摘んで持っていきなさい」と言ってくださいました。

ユーモラスで、ユニークで、力強く、お元気な、紫竹昭葉さん。案内していただく間もずっと、冗談の連発、大笑いの連続でした。そして、みんなを包み込むような優しさ。これからの高齢化社会の、まさにお手本のような、輝いている女性でした。

今日も世界は美しい 〜春の写真〜

今年の4月以降に撮ったお気に入りの写真を掲載します。

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大坂なおみ選手の発言は歴史的転換点なのではないか?

大坂なおみ選手が全仏オープン試合後の記者会見を拒否。敗者へのインタビューが苦痛であると表明。これに対し、4大大会の主催者側は、4大大会からの追放も示唆。

もやもやしますね。

5/31のこのニュースに対し、松岡修造さんは報道ステーションでのニュースの中で、理解できないので本人からの説明を望むと答えていました。錦織圭さんもNEWS23の中でやや理解できないというようなニュアンスも表明していました。もちろん、ふたりともある程度の共感は示していましたが、戸惑っているようでした。

これに対して思うこと。

日本など東アジアの人は、セロトニントランスポーターSS型、すなわち心配性遺伝子を持っている人が多いことが知られています。文化心理学でいうところの個人主義的な傾向の強い国では心配性遺伝子を持っている人は少なく、集団主義的な傾向の強い国では心配性遺伝子を持っている人が多いことが知られています。

しかし、近代以降の世界では、個人主義的な傾向の強い欧米諸国を中心として国際秩序が構築されてきました。その結果として、個人主義的に自信にあふれた強い自己であることが当然とされがちです。学術的にはこれに警鐘を鳴らすのが文化心理学なのですが、一般的に言って、社会に学問の成果や最先端の考え方が浸透するまでには時間がかかります。

障害者や働き辛さを感じている人々に対して「どうして普通にできないの?」と聞くことは、昔は無知が原因で、タブーではなかったのですが、もはや差別や偏見とみなされるようになりました。

理由があって仕事がはかどらない社員に対して「遅いぞ、なにやってるんだ?」と言うことは、昔は許容範囲でしたが今ではハラスメントと呼ばれるようになりました。

一方で、過酷なインタビューを苦痛と感じる選手に対してインタビューをすることは、現時点では暴力や偏見やハラスメントとはみなされていないかもしれません。

しかし、「障害者や病気の人とは違って、世界ランキングトップレベルの人は立派な人だから困難に耐えられるはず」という風潮があるとしたら、それはまさに暴力・偏見・ハラスメントではないでしょうか。現代社会では、弱者への配慮が国際的には常識的になりつつあるものの、一見強者と思われている人への配慮はまだほとんど常識になっていないと思います。「弱者に配慮すべき、しかし強者には配慮しなくてもいい」というのは偏見だと思うんですよね。みんな、おなじ。みんな、弱者なんです。特に、心配性遺伝子を引き継ぐセンシティブさの強い人々にとって、現代社会の中心的な規範(独立して自立した強い個人こそ素晴らしいという個人主義的な風潮)は、暴力・偏見・ハラスメントに満ちているとも言えると思うのです。

スティーブン・マーフィー・重松先生が、スタンフォード大学での授業について話されていたエピソードが印象的でした。授業の後半に「では、質問のある人は?」と聞くと、スタンフォードのほとんどの学生は、手をあげるそうです。そこで、重松先生はこう言うそうです。「おいおい、そんなに手を挙げて自己主張するもんじゃない。日本では、みんな、手をあげないんだぞ。もっと、無理をせず、謙虚に、自分の心に従ったらどうだ?」。

インタビューにはっきりと答えられることこそが強い選手の強いあり方である、という個人主義的な世界観も、そろそろ見直すべき時が来ているのではないかと思います。

経済成長から、心の成長へ。本文とは一見関係ないようですが、大きな歴史的転換について語った「人類3.1」もぜひ見てください。近代西洋型ないしは個人主義重視型の世界から、全体を俯瞰してみんなの幸せを目指す社会へ。大坂なおみさんの今回の話は、歴史的転換点を表す一つの出来事なのではないかと私は思います。
https://youtu.be/Ljs8GUHY-bE

そんなわけで、大坂なおみさんを応援しています。世論の高まりにより、4大会主催者による追放という判断が覆ってほしいと思いつつ、上記の文脈により、大坂なおみさんの思いが国際的には理解されにくいのではないかと心配です。僕も心配性遺伝子を持っていますので。。。

心より願っています。全ての人が尊重される世界へと、世界が発展していきますように。

空海と大日如来

「お坊さん、教えて!」、始まりました。

4月から12月まで、様々な宗派のお坊さんに以下のことをお聞きしていく予定です。

•あなたの生い立ちは? なぜお坊さんになられたのですか? 最初からなりたかったのですか? あなたの活動は? 特に、宗派を超えた活動や、宗教を超えた活動は?
•あなたが根源的に目指すことは? 世界平和? 自己の充実? すべての物質の安寧?
•あなたの宗派の教祖はどんな人? 成り立ちは? あなたの宗派が根源的に目指すことは? 人を幸せにすること? 各宗派の一押しの教えは? たまらなく魅力的な点は?
•大乗仏教と上座部仏教の違い、大乗仏教各宗派の違いとは?(各宗派の立場から)
•考え方の、日常への取り入れ方のポイントは?
•お坊さん自身は、お坊さんとして活動していてどう変わった? これから目指すことは?

で、第1回は、真言宗の僧侶、早川智雄さんと松村妙仁さんにお越しいただき、お話をお伺いしました。ナビゲーターは、空海マニアの多摩美大教授安藤礼二先生と、私。動画はアーカイブとして事後にも試聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=yamm9fIc9rs

2回目以降も各宗派のすてきなお坊さんに登壇いただきます。楽しみにしていてください。
https://www.facebook.com/お坊さん、教えて

さて、第1回目のことを書きたいと思います。

一番印象に残っていることは、ふたつ。空海はロックンローラーだったということと、みんな大日如来なんだよという話。

空海はロックンローラーというのは、安藤先生がおっしゃっていたことなので、知りたい方は動画をご覧ください(笑)。

二つ目。まず、大日如来って、ご存知でしょうか? 私は、名前を聞いたことはありましたが、真言宗の御本尊だということを明確に覚えていたわけではありませんでした(不勉強ですみません)。しかし、今回の講座でしっかりと頭に刻みました。真言宗では、大日如来は、宇宙全体を体現するエネルギー。要するに、慈悲のかたまりです。しかも、真言宗では、私たち人間は全員、本来、大日如来のような完全性を持っている存在だと考えます。つまり、人間は、本来素晴らしい存在だったということを思い出していく存在だと考えるのだそうです。即身成仏とは、そのまま座禅を組みながら死んでいくことというイメージがありました(不理解、すみません。。。)が、そうではなく、私たち自身が大日如来なのだということに今ここで気づくことを意味するのだそうです。

私は、お話をお聞きしながら、スピノザを思い出していました。スピノザは哲学書『エチカ』の中で、神がいたとしたら、それは「神=自然」ということであるはずだということを数学の証明のように論じました。科学に立脚する私としては、大日如来=自然と考えると、私たち人間は自然の一部であり、自然界にある原子と分子でできていると考えられますから、自然=私たち。つまり、大日如来=自然=私たち。すべては同じく自然の一部なのだから、存在に感謝し愛しみながら生きるべきなのではないか。

真言宗の教えは、私には、これからの人類が持つべき科学的なリテラシーに聞こえました。逆に、早川さんは「前野先生の中には大日如来がおられることが見えます」とおっしゃってくださいました。このやりとりから感じたことは、科学と宗教(真言宗)は、同じことの別の解釈であって、対立する主張ではないのではないかということ。科学的な説明が腑に落ちる人はそれに基づけばいいし、スーパースター空海が日本で始めた真言宗が腑に落ちる人はそちらに従えばいい。

日本に渡ってきた仏教だけが、動物、植物だけでなく、鉱物も仏性を持つと考える、という解釈にも共感しました。138億年前のビッグバン以来、宇宙を構成し、多様で豊かなインタラクションを繰り返してきた構成要素たち。すべての構成要素たちを愛おしく思うとともに、自分も構成要素の一部であることに、心からの安心感と共感を感じながら、早川さん、松村さん、そして安藤先生のお話をお聞きした2時間でした。有り難うございました。宇宙の営みに感謝。

SDMと幸福学は関係あるのか!?

修士課程1年生のある学生から、「システムデザイン・マネジメントと幸福学って、関係あるんですか?」と聞かれました。本人は、素朴にそう思ったんでしょうが、私としてはショックでした。私の思いが、お膝下にも伝わっていないかもしれないなんて。

もちろん、答えは、YESです! もっと、伝えないと! と思ってこの記事を書いています(笑)。

人類が生まれてから20万年。俯瞰的に捉えると、人類の最大の目標は、どんな時代も「人類(および生きとし生けるもの)が幸せに生きること」だと思うのです。「社会の経済成長が重要だ」と言う人がいますが、経済成長は、人類が豊かで幸せな生活を獲得するためですよね。「個人の収入を増やすことが重要だ」という人もいますが、もちろん収入を増やすことの目的は個人が幸せになるためですよね。つまり、人類のあらゆる人の最大の目標が「幸せ」であることは自明だと思います(もしもそうではないと思う方がいらっしゃったら教えてください。とことん議論したいです!)。

しかし、2000年以上の前のアリストテレスの頃から、長い間、「幸せ」について考えることは哲学・思想・宗教の課題と考えられていました。科学的に分析したり、工学的に設計したりできるものではないと思われていたからです。しかし、コンピュータの発達と期を同じくして、1980年代から、幸せについての科学が進展しました。古くは心理学・統計学を中心とした学問として、近年ではAIやテクノロジーの対象として。「幸せ」についての学問が急速に進展したのです。これを、Well-Being(幸せ、健康、福祉)の科学と呼びましょう。

Well-Beingの科学は、予防医学だということもできます。「健康に気をつける」ように「幸せに気をつける」ことは、免疫力が高まり、健康になり、長寿になり、生産性が高まり、創造性が高まり、楽観的で、主体的で、利他的で、信頼でき、誠実で、自己肯定感が高く、多くの人に好かれ、人格的にもすぐれ、リーダーシップを発揮することにつながることが、世界中で行われてきた数々のwell-being研究によって明らかにされています。

もはや、心の「幸せ」は、体の「健康」と同じように、コントロールできる時代がやってきたのです。

だったら、ものづくり(製造業)、ことづくり(サービス業)、人づくり(教育)、コミュニティー作り(地域活性化)、職場づくり(幸福経営学)は、well-beingを陽に(explicitに)考慮したものにすべきだと思いませんか。学術的に、そのメカニズムについての学問を多くの人が学び実践する世界を作るべきだと思いませんか。私は確信しています。すべてのシステムデザインは、well-beingを考慮したものになるべきであると。なぜなら、これまでに述べてきたように、well-beingは人類にとって必須の要求であるのみならず、学術的にコントロール可能な変数だからです。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科は、あらゆるシステムをデザインしマネジメントするために2008年に生まれました。これまで述べてきたように、あらゆるシステムのデザイン(ものづくり、ことづくり、人づくり、コミュニティー作り、職場づくり)とそのマネジメントのために、最も考慮すべきことの一つは、well-beingです。つまり、SDMとwell-beingは深く関連していると私は思うのです。

私は、環境問題、貧困問題、パンデミックの問題など、well-beingの問題が逼迫する現代の人類にとって、最も重要な価値観だと思うから、well-beingの研究を行ってきたわけです。「SDGsと似てますね」と言われることがありますが、SDGsが脚光を浴びる前から、私はwell-beingが重要だと言ってきました。さらにいうと、ポストSDGsだとさえ思っています。MDGsからSDGsへと進展しましたが、現代とは、人類が「右肩上がりの成長から、定常的な繁栄へ」とパラダイムシフトする局面だと思うのです。クラウス・シュワブさんはそれを「グレート・リセット」と言いますし、ジョアンナ・メーシーさんは「グレート・ターニング」と言います。同じことです。京大の広井先生の「定常社会」も、原丈人さんの「公益資本主義」も、新井和宏さんの「共感資本」も、ハラリさんの「サピエンス全史」も、同じ文脈です。興味深いことに、実はSDGsはその名称に旧パラダイムと新パラダイムを含んでいます。旧パラダイム=デベロップメント(開発・成長)、新パラダイム=サステナブル(定常・成熟)。つまり、SDGsとは、期せずして、というか、皮肉にも、大きなパラダイムシフトの過渡期を表す名称なのです。パラダイムシフト後は、WGs(ウェルビーイング・ゴールズ)になるべきだと私は思います。ゴールという名称も相応しくないかもしれません。人類がいまここにwell-beingであること。Well-Being As Is。
(ちなみに、well-beingはSDGsの一つになっているため、SDGsのサブシステムであるようにも見えますが、SDGsでいうところのwell-beingは狭義の健康を表している傾向がありますので、私としては、次世代システムでは包含関係を逆転すべきだと思っています。)

そんなわけで、私が所属するシステムデザイン・マネジメント研究科と、私が研究する幸福学は、密接に関わっています。密接どころか、well-beingはSDMにとって最も重要なコンセプトのひとつだと、私は思っています。

考えてみてください。

私たちは、生まれてきました。

何の因果か、現代社会に、人間として、生まれてきました。

奇跡ですよね。

このことを私たちは謙虚に祝福すべきだと思うのです。素晴らしい奇跡。はかない奇跡。

線香花火のようです。人類史20万年、生命史40億年、地球史45億年、宇宙史138億年に比べると、私たちの人生はあっという間です。こんな、ほんの一瞬、生物として生き、しかも高等生物として五感で感じ、いろいろなことを考え、その結果を記述して残せる幸せ。有り難いとしかいいようがないではありませんか。

だったら、美しい世界を作ることに尽力してから、この舞台から去りたいと思いませんか。

私はそう思います。人類の一員として、生きとし生けるものの一員として、私は、この星を美しい星にするために全力を尽くしてから、この星の分子や原子に戻りたいと思います。

私は心から願っています。すべての生きとし生けるものが、そのささいな生を幸せに全うできますように。そのために、みんなが力を合わせて生きていけますように。そのためにこそ、サイエンス&テクノロジーから歴史学・民俗学まで、人類の叡智を利用できますように。マクロからミクロまで、近視眼的な争いがなくなりますように。学問も、仕事も、経済も、政治も、人間のすべての活動が、重箱の隅をつつくのではなく、根本的な目的である、人類の幸せを目指したものでありますように。これを読んでくださっているあなたや、生きとし生けるものが、人類と生きとし生けるものの幸せを第一に願いながら、生きていけますように。

そして、私は、そんな理想的な世界を創ることは可能だと思っています。願った社会は創れると思っています。みんなが一歩を踏み出せば。

あなたはどんな一歩を踏み出しますか? みんなでみんなが幸せな世界を創りましょう!

近所と庭の写真

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北海道のフラテッロ・ディ・ミクニでモヒートを飲んだ時にいただいたミントが自宅で元気に育っています。今日はじめてモヒートを作ってみました。

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庭の花。鈴蘭水仙(スノーフレーク)。

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庭の木の芽。

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これも庭の花。

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野球少年と桜吹雪。

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今日は冬というのに暖かい一日。梅が美しい。
横浜市都筑区の東山田公園にて。

いつもはミラーレス一眼レフEOS R5で撮るのですが、
今日はiPhoneにて。

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脳の中の「私」はなぜ見つからないのか

拙著『脳の中の「私」はなぜ見つからないのか』(技術評論社、2007)はしばらく絶版となっていましたが、以下の動画を見た方から読みたいという声が上がっていましたので、pdfファイルを無料公開いたします。ぜひお読みください!

YouTubeでの解説動画
https://www.youtube.com/watch?v=RSfS8OnBep0&feature=youtu.be

pdfファイル(ただし、第5章以外)
https://www.dropbox.com/s/huo25aw53diwt20/honbun.pdf?dl=0

Amazonのページ(中古本しかありませんが。。。)
https://amzn.to/2RmGLkK
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西伊豆

恋人岬
恋人岬

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浮島海岸

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堂ヶ島

明けましておめでとうごさいます!

明けましておめでとうごさいます!

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母が作った版画の年賀状。

過去の年賀状はこちら

前野隆司の幸福学関連書籍一覧

星渉さんとの共著の本が売れています。発売日の11/25にAmazonのランキングで20位に。私の本史上最高順位でした。これを機会に、これまでたくさん出してきた、幸せ関連書籍についてまとめましょう。全14冊。それぞれ面白いのでぜひ読んでみてください。全部読まなくても(笑)、用途に応じて(!?)2、3冊読んでいただければ幸福学の基本はご理解いただけるのではないかと思います。


【幸福学・ポジティブ心理学の基本(真面目系)】


幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書) 2013.12.18
幸福学について学ぶなら最初に読んで欲しい本。幸せの4つの因子の4つめが本書では独立とマイペースの因子(あなたらしく因子)となっていますが、次の本からは独立と自分らしさ(ありのままに因子)に変更していますのでご了解ください。
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https://amzn.to/2FR6EUz

実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス (PHP新書) 2017.8.10
ポジティブ心理学という視点から、ウェルビーイングについて述べた本。『幸せのメカニズム』よりもポジティブ心理学の研究者にフォーカスを当てています。
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https://amzn.to/2NsXwJU

実践・脳を活かす幸福学 無意識の力を伸ばす8つの講義 (講談社)2017.9.27
実は『幸せのメカニズム』の続編。『幸せのメカニズム』では幸せであることの条件を述べましたが、本書では幸せになる方法について学術的な知見を述べています。おすすめです。
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https://amzn.to/2QTaN0B


【幸福学・ポジティブ心理学の基本(カジュアル系)】


99.9%は幸せの素人(角川書店)2020.11.25
星渉さんの第一認証で書かれた本。終章は私が書いています。
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https://amzn.to/3kOOwNr

なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣(WAVE出版)2020.12.7
妻との共著。女性向きのカジュアルな本。かわいいイラストたっぷり。気楽に手にとっていただきたいです。
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https://amzn.to/36qaocJ

7日間で「幸せになる」授業(PHP)2020.8.29
7日間で幸せになると書かれている通り、気楽に幸せについて考えるための手法を述べています。
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https://amzn.to/2E82ryE

月曜日が楽しくなる幸せスイッチ(ヴォイス)2017.8.29
妻の処女作。私は監修。幸せスイッチという観点が新しく読みやすい本です。
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https://amzn.to/2Num2uq


【家族・パートナーシップ・子育て】


家族の幸福度を上げる7つのピース(青春出版)2020.10.20
家族の幸せの7因子について、はたらく人の幸せの7因子・不幸せの7因子を参考に描いてみました。
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https://amzn.to/3106XHN

ニコイチ幸福学 研究者夫妻がきわめた最善のパートナーシップ学 (CCCメディアハウス)2019.5.1
夫婦で、パートナーシップについて書いてみました。
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https://amzn.to/30pXAzn

「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方(ディスカバートゥエンティーワン)2018.7.12
幸福学に基づく子育ての本。主題は、親が幸せであれば子供も幸せ、ということ。コラムは妻のマドカが書いています。
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【経営・職場・お金】


幸せな職場の経営学(小学館)2019.5.30
幸せな社員は不幸せな社員よりも創造性が3倍、生産性がd30%高く、欠勤率、離職率が低いなどのエビデンスから、社員と社会を幸せにする経営の重要性について述べています。
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幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える 2018.5.23(内外出版社)
こちらも幸せな経営についての本。フロー経営塾やホワイト企業大賞を主宰する天外伺朗さん、経営学者の小森谷浩志さんとの共著。
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年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?: お金と幸せの話(河出書房)2020.4.28発売
はじめてお金と幸せについて述べてみました。
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幸せ企業のひみつ “社員ファースト"を実現した7社のストーリー(佼成出版)2019.7.17
著者は千羽ひとみさん。私は編著者。
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幸福度診断

積水ハウスさんと一緒にやっている従業員の幸福度診断(幸福度診断Well-Being Circleはたらく人の幸せ/不幸せの14因子)がプレスリリースおよび新聞記事になっています。

■積水ハウスプレスリリース
幸福経営学の第一人者 慶應義塾大学大学院前野隆司教授と「従業員の幸せ」を追求

このたび、積水ハウスグループの約 27,000 人の従業員を対象に興味深い調査を行うことになりました。慶應義塾大学前野研究室が株式会社はぴテックと共同開発しました、個人の幸せを多面的に計測可能なアンケート調査「幸福度診断 Well-Being Circle」と、同じく前野研究室が株式会社パーソル総合研究所と共同開発しました、働く人の幸せを分析可能なアンケート調査「はたらく人の幸せ/不幸せの 14 因子」を同時に計測し、その分析を行うという、世界で初めての試みです。

■日本経済新聞
積水ハウス、従業員の幸福度調査

2020/11/20付日本経済新聞
積水ハウスは19日、グループの全従業員約2万7千人を対象にして幸福度を調査すると発表した。日本の「幸福学」の第一人者である慶応大学大学院の前野隆司教授が監修。20日から職場や家庭環境を含めた幸福度を多面的に計測する。従業員の幸せと職場の幸せの相関関係を分析するような調査は日本企業で初めてとしている。

やさしい経済学 幸せ中心社会への転換

日本経済新聞の「やさしい経済学」で2020年10月29日から11月12日まで10回の連載を行いました。

タイトルは、「幸せ中心社会への転換」。

アメリカ・ファーストと言った大統領が4年で去ることがほぼ確実となった今日この頃ですが、「自分・ファースト」ではなく、「みんなの幸せ・ファースト」な時代へと転換すべき時が来ているのだと感じます。

世界経済フォーラムのシュワブ会長も言いました。

「2021年の年次総会(ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」。世界の社会経済システムを考え直さねばならない。第二次世界大戦後から続くシステムは異なる立場のひとを包み込めず、環境破壊も引き起こしている。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなった。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」

これまでの資本主義自体を考え直すべき、という議論も盛んです。公益資本主義、共感資本主義、定常経済、縮小社会、共感資本など。いろいろな論客が、いろいろな文脈で、似たことを言っています。

私の言葉で言うと、「幸せ中心社会への転換」。幸せをみんなが中心に考える社会に、変革していきましょうよ、ということです。

日経新聞の方に確認したら、掲載後は著者が自由に公開して良いとのこと。10回の連載をここに一挙公開します。ぜひ読んでみてください!

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秋の横浜

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小淵沢・清里

小淵沢・清里に行ってきました。秋が美しい。

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西精工株式会社見学レポート

2020年10月29日、念願の西精工見学。

すばらしくて、感動しました。見学中何度も感動の涙をハンカチで拭くという状態でした。

株式会社eumo主催の見学会。前日に徳島入りして西社長とも懇親会をし、当日は朝8時に伺って、朝礼の見学、会社見学、西社長のお話、質疑応答。12時5分までの予定でしたが、白熱して12時半を過ぎていました。

社員の90%が、月曜日に会社に行きたくてたまらないという会社。エネルギッシュで人間臭い西社長の感動的なお話は何度も聞いていたものの、見学は初めて。結論から言うと、250人くらいの社員の方々は、皆さん、真剣さの迫力があり、大きな視座と思いやりを持っていて、声が大きく純粋。人間性を尊重され、毎日成長し、人間の能力を100%発揮すると、人間はここまでいけるんだ、というお手本のような方々でした。会社って、協力して仕事をすることを通して人間性を磨く場なんだなあ、とつくづく思いました。

私はこれまでたくさんの会社を訪問してきましたが、経験上、会社の長すぎる理念や社訓を唱和することに懐疑的でした。朝礼で長い社訓を棒読みする覇気のない社員をたくさん見てきたからです。説教くさい親みたいに、ああしろこうしろと細かく指示する経営者からは、思いが社員に伝わらないと思っていました。そして、西精工さんの創業の精神、経営理念(私たちのミッション、私たちのビジョン、私たちの行動指針)は長い。ちょっと長すぎるのではないかな、という疑問がないわけではありませんでした。

創業の精神

しかし、朝礼に出た瞬間、疑問は吹き飛びました。この日見学したのは、営業と品質管理の方々27名による朝礼。最初は創業の精神と経営理念の唱和です。

みなさん、声が大きい。もちろんみんな暗唱しています。そして、表情を見るとわかります。みんながその言葉を自分のものにしていて、かみしめながら生き生きと声に出していることが。清掃され整頓された美しい部屋中に響き渡る、心を込めた創業の精神と経営理念は、それを聞いているだけで感動ものでした。これだけでわかります。西社長が、時間をかけて、思いを社員たちに伝え続けてきたことが。そして、社員たちは、それに応えて、成長し続けてきたことが。

そのあとは、今期のテーマや今日のテーマについて、全体で、あるいは小グループに分かれての、対話の連続でした。みなさんの真剣で機敏な動きが印象的でした。誰かが話し出すと、さっと体全体をそちらに向け、みんな目を見て、真剣に聞く。

朝礼

この写真、見てください。写真では伝わりきりませんね。みんなの真剣な視線が話す人に注がれている迫力は、言葉では表せません。みなさん、真剣でした。そして、真剣な表情ながら、楽しんでおられました。ひとりとして、いやいや、やらされ感でやっている社員はいません。顔や態度や言葉でわかります。

1時間近く朝礼をすることで有名な西精工さんですが、この日の朝礼は1時間半近くに及びました。毎日朝礼を1時間も行う、ということが西精工さんの特徴の一つですね。対話です。アイザックスによる対話の心得は、

①listening(しっかりと聴く)
②respecting(敬意を表して聴く)
③suspending(批判は保留する)
④voicing(自己開示して本音を声に出す)

ですが、これらが非常に高いレベルで実現されていました。司会の方や質問者は、「そのときどんな思いだったんですか」「具体的には何を変えるのですか」などの本質的な問いを発していました。また、皆さん純粋。「営業の方が頑張って仕事をとってきてくれたのだから、納期が遅れないよう私たちが管理します」のように、仕事の内容が、単なるタスクとしてではなく、人間と人間との思いやりとして語られていました。

そう、純粋なのです。理念をだれも綺麗事だとは思っていない。子供の頃のような純粋さで、本当に良い社会を作りたい、良い会社を作りたいと、全員が真剣に思っている。そして、毎日改善して行動している。この会社のピュアな雰囲気は、中学・高校の頃、みんなで力を合わせて文化祭や体育祭の準備を行っていた頃の空気感に似ています。みんなで成し遂げることのために、一人も取り残さず、一丸となっている会社。

具体的な施策については、拙著『幸福学×経営学』(内外出版社)にも載っていますし、世の中にたくさんの記事が出回っていますので、そちらをご参照ください。

とにかくお伝えしたいのは、この空気感。「社員を幸せにしたい」という西社長の思いが全員に伝わっていて、全員が「良い会社を作りたい」と毎日真剣に努力している会社。しかも、努力を生き生きと楽しんでいる会社。会社って、いいなあ。会社って、本来、お金をもらいながら、幸せになるための勉強をするところなんだなあ。そんなことをしみじみと思った会社見学でした。

社員を幸せにする会社として有名な伊那食品さんを見学した時
http://takashimaeno.blog.fc2.com/blog-entry-461.html
の感動と同じでした。順位付けをするものではありませんが、これまで、見学した会社の中で、伊那食品さんは飛び抜けて素晴らしいと思っていましたが、西精工さんは、伊那食品さんと同率首位です。2社に共通することは、経営者が素晴らしいだけでなく、社員の方々が、どの方にお話をお聞きしても素晴らしいということです。もちろん、若い人は荒削りの面があったりもしますが、しかし、理念が何かをわかっていて、自分で考え、自分で行動し、自立してしっかりとした内容の、いや、感動的な内容の話を、すべての社員ができること。会社で学び、成長し、幸せになろうとしていること。もちろん、同時に、仕事を通して社会の役に立っていることを、自分ごととして、肌身でみんながわかっていること。その充実感が、人間の存在感として、どの社員からも、もちろん社長からも、オーラのように醸し出されていること。

面白いことに気づきました。伊那食品の社員の雰囲気は、塚越最高顧問や塚越社長に似ていたのに対して、西精工の社員の雰囲気は西社長に似ていました。大家族経営。長年連れ添った夫婦は似てくると言いますが、いい会社はそれぞれ個性的で、その個性的な雰囲気が全体に伝わっているものなんだなあ、と思いました。

多くの方に、本当に素晴らしい会社を、見学していただきたいです。本を読むのも良いですが、この空気感は、実際に行ってみないとわかりません。あれから何日か経ちましたが、思い出すと今でもオキシトシンやセロトニンがあふれてきます。西社長、西精工のみなさま、eumoのみなさま、一緒に見学したみなさま、ありがとうございました。私も、幸せな世界を作るために、微力ながら真剣に歩んでいきたいと思います。決意を新たにした会社見学でした。

西社長講和
西社長の感動的なお話

記念写真
全員で集合写真

西精工のネジ
お土産にいただいたナットくん

前野隆司 登壇予定(2020年度後半)

最近掲載していませんでしたが今後の講演予定を掲載します。

10/12 「日本の美と技の未来」シンポジウム(オンライン)幸田フミさんと対談

10/13 かわさき科学技術サロン(川崎市コンベンションホール+オンライン)で講演

10/18 Wisdom2.0 JAPANで荻野淳也さん、武田雅子さんと対談(オンライン)

10/18 わたしたちの GREAT RESET 資本主義から幸福主義へ ~私たちはいかに生きるべきだろうか~座談会に澁谷まりえさん、柳沼 圭佑さん、米良 克美さんと登壇(オンライン)

10/19 人格塾で天外伺朗さんと対談(オンライン)

10/21 パーソルカンファレンスで井上亮太郎さんと講演(オンライン)

10/21 『幸せのメカニズム』著者と語る会に登壇(オンライン)

10/22 ウェルビーイングポリシー研究会で講演(オンライン)

10/27 恵比寿ロータリークラブで講演

10/28-29 徳島県の西精工訪問(株式会社eumoの経営塾)

11/6 JCI世界大会で基調講演とパネルディスカッション(パシフィコ横浜)

11/7 ポジティブサイコロジー医学会に参加(オンライン)

11/12 SDGs×幸福×経営シンポジウムに登壇(オンライン)

11/14・11/28 三田オープンカレッジで講演(オンライン)

11/15 新しい自己紹介の仕方のワークショップ(水上あきこさんと。オンライン)

11/16 人格塾 J.Y.parkさんの人格育成座談会に登壇(オンライン)

11/21 銀婚パーティー(東京アメリカンクラブ)

11/22 『そのままの私で幸せになれる習慣』出版記念「いい夫婦の日」トークショーにて前野マドカと共演

11/23 香川県医学会で講演

11/24 「日本の美と技の未来」シンポジウム(オンライン)矢島里佳さん、戸田柳平さんと対談

11/25 AHA!HAカンファレンスに登壇予定(オンライン)

12/6・12/20 はたらく幸せ講演会に井上亮太郎さん、朝野かおりさんと登壇(オンライン)

12/7 『無意識の力を伸ばす8つの講義』著者と語る会に登壇(オンライン)

12/8・1/18 「日本の美と技の未来」シンポジウム(オンライン)矢田部英正さんと対談

12/9 「未来×幸せ経営フォーラム」にて横田英毅さんと対談(オンライン)

12/12,19,26 『そのままの私で幸せになれる習慣』出版記念無料ワークショップにて前野マドカと共演(オンライン)

12/14 人格塾で由佐美加子さんと対談(オンライン)

12/16 埼玉県経営者協会で講演(パレスホテル大宮)

12/17 花まる子育てカレッジにて高濱正伸さんと対談(オンライン)

12/23 ユニポスのイベントに石井遼介さんらと登壇(オンライン)

1/17 ホワイト企業大賞授賞式に出席予定

1/28から6回 慶應MCC デザイン×システム思考講座に登壇(オンライン)

2/15 「日本の美と技の未来」シンポジウム(オンライン)嶋田彩綜さんと対談

3/2 ウエイクアップアワード登壇予定

3/5 三重モーニングカレッジにて講演(ホテルグリーンパーク津)

3/13 医療マネージメント学会神奈川県支部総会で講演

3/17 「日本の美と技の未来」シンポジウム(オンライン)予定

3/20 shiawase2021シンポジウム(オンラインの予定)

あなたが足の薬指だったら

【あなたが足の薬指だったら】

想像してみてください。
あなたが足の薬指だったとしたら。
想像できるでしょうか。

いつもあなたと一緒にいる
大切な薬指のことですから
想像できますよね。

あなたが足の薬指だったら、
足の中指のやつ、俺より大きくて生意気だなあ、と妬みますか?
足の小指、へへーん、ちっちぇーなー、と見下しますか?
反対の足の薬指を見て、ライバルだから蹴落としてやると思いますか?
手の薬指を見て、なんだか華やかで羨ましいなあ、と思いますか?
目を見て、雲の上の存在、自分とは違う世界にいる人だなあと思いますか?
口を見て、僕はあんなふうには歌えないなあと思いますか?
鼻を見て、あんな風にいい匂いを嗅げないなあと嘆きますか?

全身で歩き出した時、あなたには大きな力がかかります。
なんだよ、全身、俺にばかりストレスかけるなよ、と不平を言いますか?
全身が走り出した時、嵐が来たと不安になりますか?
お風呂に入った時、急に熱くなったとびっくりしますか?
サッカーボールを蹴る時、すごい衝撃に驚きますか?

そうではないはずです。
足の薬指は、どんな時も、文句も言わず、
体の他の部分と力をあわせ、
自分にできることを行いながら、
生きています。

雨の日も、風の日も。
体が病気になって苦しんでいる時も、
脳が大変な仕事でがんばっている時も、
辛いことがあって苦しんでいるときも、
よろこびに満ち溢れている時も。

足の薬指をあなたに、
全身を地球に、
置き換えてみてください。
想像できるでしょうか。

いつもあなたとともにいる
大切な地球のことですから
想像できますよね。

隣の大きな人を見て、俺より大きくて生意気だなあ、と妬んでいませんか?
隣の小さな人を見て、へへーん、ちっちぇーなー、と見下していませんか?
少し離れたライバルを見て、蹴落としてやろうと思っていませんか?
成功した友人を見て、華やかで羨ましいなあ、と思っていませんか?
大成功した有名人を見て、雲の上の存在、自分とは違う世界にいる人だと思っていませんか?
歌う人を見て、僕にはあんなふうには歌えないと思っていませんか?
華やかな人を見て、あんなふうに自分らしくは生きられないとあきらめていませんか?

世界に何かが起こった時、あなたには大きな力がかかります。
どうして自分にばかりストレスがかかるんだろう、と嘆きますか?
パンデミックや災害の時、先が見えなくて不安になりますか?
気候変動で暑くなったととき、自分は無力だとうろたえますか?
時代変化の衝撃に驚き立ちすくみますか?

そうではないはずです。
私たちは、地球上に住む兄弟。
みんな仲間なんです。
あなたは、どんな時も、
すべての他の人々と力をあわせ、
自分にできることを行いながら、
生きていくべきではないでしょうか。

雨の日も、風の日も。
地球がパンデミックで苦しんでいる時こそ、
みんなで力を合わせましょう。
だれかが大変な仕事でがんばっている時には、
手を差し伸べましょう。
辛いことがあって苦しんでいる人がいたら、
助けにいきましょう。
戦ったり、歪みあったり、人のせいにしたり、
人と比べたり、ねたんだり、羨ましがったり
している場合ではありません。

地球はあなた、
あなたは地球なのですから。

地球がこれからも、
よろこびに満ち溢れた
美しい惑星でありますように。

東京青年会議所出演動画

先日、東京青年会議所のイベントに動画出演しました。
好評だったとのこと。うれしいです。

出演した動画は公開されています!
シェアします! ご覧ください!

①科学的根拠に基づく幸福学 
https://youtu.be/fEI49A-zkuA

②新しい豊かさの価値≠経済成長
https://youtu.be/4TWM5bZfVv4

③新たな中長期ビジョン×幸福学
https://youtu.be/bgwmq6V5340

④JCメンバーの幸福度分析
https://youtu.be/v7kXzyY7lZk

北海道の思い出

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はたらく人の幸せの7因子・不幸せの7因子

慶應SDM前野隆司研究室では、パーソル総研との共同研究の結果、「はたらく人の幸せの7因子・不幸せの7因子」を求めました。

もともと、前野隆司研究室では、幸せの心的要因に関する4因子を明らかにし、ものづくり(工学)、ことづくり(サービス工学)、組織づくり(経営学)、町づくり(地域活性学)、人づくり(教育)に適用してきましたが、このたび、コロナ時代のニューノーマルを探るヒントとして、「はたらく人の幸せの7因子・不幸せの7因子」を明らかにしました。

このため、7/15の午前中にプレス発表・記者会見。同日午後に「幸福学」フォーラム開催 ニューノーマル時代の"はたらく幸せ"とは何か? を開催しました。
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/well-being.html

研究結果の載っている特設サイトはこちら。
https://rc.persol-group.co.jp/well-being/

幸福学フォーラムで用いたスライドの一部を用いて説明しましょう。

まず、健康診断と同じく、幸せは診断できます。幸せな心の状態を作っておくと、人は創造性も生産性も高く、自己肯定感や自己有用感も高く、利他的で感謝し、免疫力が高く、健康で、病気になりにくく、長寿であることが、様々な研究により知られています。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科ヒューマンラボ(前野研究室)でも様々な研究を行ってきました。現在、私たちが提供しているのは、以下の3つの幸福度診断です。

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7/15に公開されたのは、3つめの、はたらく人の幸せの7因子・不幸せの7因子」。尺度は以下の通りです。
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今回の研究で面白かったのは、幸せと不幸せは対立概念ではないという点。幸せの7因子と不幸せの7因子はほとんど対応関係にはなかったんです。つまり、要するに、不幸せにならないためにやるべきことと、幸せになるためにやるべきことは違うということなのです。不幸せの要因を取り除いて普通になることと、普通の状態から幸せの要因を満たすように心がけてさらに幸せになることは別のこと、といってもいいかもしれません。

ただ、14個もあると覚えにくいですよね。そこで、14個を覚える方法を考えました(笑)。

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これです。「爺利他役立ち」と「王子不要教祖裡」。謎の語呂合わせのようにお感じの方もいるかもしれませんが、私は大真面目です。以下のような深い意味を込めています。
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そして、その詳細はこちら!
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詳しくは、お問い合わせください!


日本から縄文の思想を世界に広めるべきでは

今朝の散歩。

今日も世界は美しい。

農耕革命前の旧石器時代人は、足るを知る生活をしていた。日本で言えば、縄文人。縄文人は平和裡に暮らしていたと言われているが、狩猟採取生活では富を蓄えられないから、人々は平等に、力を合わせいたわり合いながら暮らしていたのではないか。

1万年前に農耕革命が起こった。人々は定住し農耕と牧畜を始めた。村ができ、富を蓄積できるようになり、格差が生まれ、権力争いが生まれた。さらに、300年前に産業革命が起き、都市化、格差、権力争いは激化した。その挙句が現在。

縄文人は、富を蓄えて自分だけが幸せになろうとか自然を支配しようなんて考えずに自然と共生して生きていたのに、1万年前からの人類は欲に目がくらみ過ぎて誤った方向に向かったのではないか。

そんなことを思いながら自然の中を散歩した。

最近読んだお勧め本『未来のルーシー』。中沢新一さんと山極寿一さんの対談。文化人類学者と霊長類学者の視点から、僕と全く同じ想いが述べられていた。しかも、仏教だけが、農耕革命以前の思考法を受け継いだ宗教なのではないかと語られる。

すべての生きとし生けるものが幸せでありますように。すべての生きとし生けるものが幸せになって初めて自分の幸せがここにある。そんな大乗仏教の思想は、縄文の思想を受け継ぐものなのではないか。仏教、神道、武道、茶道、華道、伝統芸能、伝統工芸。農耕革命以来1万年間、人類が忘れかけているありかたを今もかすかに受け継いでいるここ日本から、人はいかに生きるべきかの智慧を世界に発信すべきではないか。森が豊かだから、近代化・都市化した現代にありながら縄文の片鱗を残しているこの日本から。

Appendix

プロフィール

Takashi Maeno

Author:Takashi Maeno
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)ヒューマンシステムデザイン研究室教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
前野隆司

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